Outline of Annual Research Achievements |
子宮内膜症の病態は不明な点か多く,ゲノム変異情報でのPrecision Medicineは限界があり,より細やかなPersonalized Medicineへ繋ぐため新規解析戦略が必要であり,RNA転写後塩基修飾のRNA編集に着目した.子宮内膜症でのRNA編集の意義を解析し,これをターゲットとした診断・治療の確立を目指している.まず,子宮内膜症・非子宮内膜症患者の検体を用いて,RNA編集のADAR1発現をPCRにて検討した.子宮内膜症検体は非子宮内膜症検体と比較し,ADRA1は有意に高発現し,またIL-1β,IL-6,IL-8の発現と有意に相関し,子宮内膜症と正の相関があることが分かった.また12Z不死化ヒト子宮内膜症細胞株(12Z細胞株)を用い,エストロゲン(E2)を添加するとADAR1,IL-1β,IL-6,IL-8の発現が有意に増加し,E2はRNA編集(ADAR1)を増加させる因子の1つであることが証明された.ADAR1 siRNAを12Z細胞株に一過性にトランスフェクションし,ADAR1ノックダウンによりMDA5発現が増加した.また,MDA5の下流にあるIRF3,IRF7,RIG-Iの発現が増加,さらにカスパーゼ3,7,8の発現が増加した.このことから,ADAR1抑制によりdsRNAシグナル伝達経路が活性化され,MDA5,RIG-I,カスパーゼ3,カスパーゼ7,カスパーゼ8といったアポトーシス因子の発現が増加することが示唆された.以上より,子宮内膜症患者では非子宮内膜症患者よりもADAR1の発現が高く,またADAR1発現はE2依存性と強く関連した.ADAR1発現は,子宮内膜症を伴うIL-1β,IL-6,IL-8のサイトカインと有意に相関した.ADAR1はdsRNAセンサー(MDA5,RIG-I)を介してI型IFN経路を活性し,アポトーシスを引き起こすことが分かった.
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Strategy for Future Research Activity |
子宮内膜症におけるRNA編集とエストロゲン,プロゲステロンレセプターの関連の検討をRT-PCR等を用いて検討する.また,子宮内膜症の関連について,ADAR1におけるRNA編集に加えて,APOBECによる子宮内膜症との関連も同時に検討し,RNA編集が子宮内膜症に与える影響を検討するとともに,マウスを用いた研究も行う予定である.
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