2023 Fiscal Year Research-status Report
Study of the EGFR pathway characteristic of HPV-related oropharyngeal cancer
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23K15895
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Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
鈴木 陽 順天堂大学, 医学部, 助教 (10912975)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | ヒトパピローマウイルス(HPV) / HPV関連中咽頭癌 / 上皮成長因子受容体(EGFR) / HPVウイルスゲノム |
Outline of Annual Research Achievements |
ヒトパピローマウイルス感染に起因する中咽頭癌(HPV中咽頭癌)では抗EGFR薬が使用されるが、抗EGFR薬効果の乏しい症例も多く副作用も強いことから、同薬のHPV中咽頭癌への治療効果予測因子と独自の治療選択法の確立が求められる。申請者はこれまでに、HPV中咽頭癌特有の病理像を認め、これに関連しEGFR発現が低いこと、またその機序としてウイルスゲノムの関与の可能性を見出し報告してきた。しかしながら、依然として詳細な機序の解明は不十分であるため、本研究ではHPV感染株化細胞を用いたパスウエイ解析を行う。本研究ではI.発癌過程におけるウイルスゲノム量推移の評価 Ⅱ.培養細胞を用いたEGFR下流パスウェイの活性化状態評価 Ⅲ.ヒト組織での活性化シグナル経路の検証と株化細胞での治療標的の探索の3段階で行った。ⅠではRNA in situ hybridization (RNA-ISH)を用いて、HPV16-E5, E6の局在を視覚的に確認した。ⅡではHPV感染扁平上皮癌細胞株(CaSki)とHPV陰性扁平上皮癌細胞株(C33a)を用いて、E6の過剰発現系を作成したうえでEGFR-MAPK・EGFR-PI3K経路のリン酸化アレイを行い、HPVウイルス感染に伴い活性化されるシグナル伝達系を同定した。さらにCAGE法(Cap Analysis of Gene Expression法)による網羅的遺伝子発現解析を行った。Ⅲではホルマリン固定パラフィン包埋切片(FFPE)を用いてシグナル伝達系の検証のためリン酸化・非リン酸化抗体を用いた免疫染色と定量PCRを行なった。さらに上記樹立細胞株を用いて、特定のシグナル伝達経路をブロックすることで抗腫瘍効果を判定し、効果的な分子治療標的となる可能性の探索を計画した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
現在収集しているサンプルは、過去の研究で使用し残検体が少なくなっているものもあるが、それらが病理検体の同切片での再収集が困難となっている。もともとのパラフィンブロックの検体が少なくなっていることが原因と考える。これまでの検体サンプルの見直しを行うこと、また新たにサンプルを収集しなおすことが必要とされるため、時間を要している。中には残存する検体量が少ないものや質の悪いものが混在するため、それらの代替として症例を追加する必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、これまでの研究内容と同様のものを病院保存の同一症例の別サンプルを準備し、各症例の検討を進める。ある程度の症例数が集まった段階で上述の、培養細胞を用いた「EGFR下流パスウェイの活性化状態評価」を始める必要があると考える。また、それでも研究の進捗が遅れていると判断される際は、大学内の同講座内の研究員などにも協力を仰ぎ、外部機関へ検体作成を発注依頼し、進めていく予定である。最終的にはヒト組織での活性化シグナル経路の検証と株化細胞での治療標的の探索までを完遂させ、HPV中咽頭癌特有のEGFRパスウエイ異常を明らかにすることで、新たなる治療戦略を見出すことを目指す。
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Causes of Carryover |
上述の理由から十分な症例数を確保しながら本研究を推進することが困難であり、検体作成のために計上した物品費を満たすことができなかった。また、国内外の学会にもオンライン参加が主となり、出張費として計上した旅費を計画通り消費するに至らなかった。次年度以降も引き続き当研究の試薬・実験kitなどに使用していく。
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