2023 Fiscal Year Research-status Report
Analysis of scleral structure in macular disease using polarization-sensitive optical coherence tomography
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23K15911
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
今永 直也 琉球大学, 病院, 助教 (50866134)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 中心性漿液性脈絡網膜症 / pachychoroid / pachychoroid関連疾患 / 偏光感受型光干渉断層計 / 前眼部光干渉断層計 / 強膜厚 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、中心性漿液性脈絡網膜症(CSC)や加齢黄斑変性の一部の症例において、pachychoroidと呼ばれる脈絡膜肥厚、脈絡膜血管拡張、脈絡膜血管透過性亢進などの所見が、pachychoroid関連疾患(pachychoroid spectrum disease : PSD)の発症や進行に深く関わることが注目されている。これまでの研究でpachychoroidの本態は渦静脈のうっ滞であると考えられているが、渦静脈のうっ滞を来す根本的な原因は不明である。 我々は短眼軸眼においてPSDの発症が多いことから、同様に短眼軸眼で発症するuveal effusion syndrome(UES)とPSDの関連に着目した。UESは小眼球を背景とする厚い強膜を有し、脈絡膜肥厚や滲出性網膜剥離を来す疾患であり、病態として強膜の結合組織異常や強膜を貫通し脈絡膜血流の排出路となる渦静脈のうっ滞が提唱されている。CSC患者において、前眼部光干渉断層計(OCT)を用いた強膜描出によりCSCを有する眼においてはUESと同様、正常眼と比較して強膜が厚いことがわかった。厚い強膜による渦静脈の灌流障害により脈絡膜血流の不均衡を来すと考えられ、pachychoroidの原因の一つとして強膜構造の関与を推察している。 一方で脈絡膜異常が強膜の組織学的構造とどのように関連するのかの研究は行われておらず、強膜構造を現行のOCTでどのように定量化するかは一定の見解はない。本研究では組織構造が描出可能な偏光感受型の光干渉断層計を用いて、正常眼やpachychoroidにおける強膜の組織学的な構造が脈絡膜血流に及ぼす影響の解析を行い、病態解明を行う。得られた知見から、強膜をターゲットにした新規治療法を開発することで、病態に即した最適治療及び、より低コストな脈絡膜に対する外科治療の開発を目的とする。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
琉球大学病院眼科を受診するpachychoroid関連疾患(pachychoroid spectrum disease : PSD)や滲出型加齢黄斑変性を有する患者に対して背景因子、臨床所見、画像診断所見に関して前向きに調査を行う。偏光感受型光干渉断層計(PS-OCT)は、前眼部OCT(CASIA2)において従来は描出不可能であった直筋下の強膜構造を得ることができ、渦静脈付近の強膜構造の描出が可能である。通常のOCTでは、生体からの後方散乱強度分布のみを計測しており、その偏光については特に考慮されていない。しかし生体内の線維状組織は構造性複屈折をもっているため、散乱強度だけでなく生体内の偏光変化を計測すれば線維状組織とそうでない組織に画像のコントラストを与えられる。PS-OCTは OCT の干渉計を偏光感受型とすることで,生体内の複屈折分布を計測することができる。PS-OCTを用いることにより、組織学的な強膜の評価が可能になる。これらを使用し一般的眼科検査に加え、後眼部OCT検査を用いて、脈絡膜構造と強膜構造・組織の定性的、定量的評価を行いデータ収集、解析を行っている。 現在までにPSD症例100眼、正常眼100眼以上の症例集積が完了している。今後はPS-OCTを用いて、正常眼及びPSDにおける強膜の組織学的変化を観測し、脈絡膜構造や循環状態とPS-OCTで得られたデータにおける統計学的解析を行い、強膜構造と脈絡膜循環との関連性を明確にしていく。
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Strategy for Future Research Activity |
現状、PSDにおける脈絡膜構造に対する強膜構造の関与を示唆する学術的発表の多くは我々のグループが行っている。前眼部OCTを用いて、今まで描出困難であったPSDの代表症例であるCSCにおける深部強膜を描出できる手法を確立し、PSDの代表疾患であるCSCにおいて、脈絡膜構造変化が強膜厚に影響されることを、世界で唯一示している。その手法を利用し、今後はCSC症例に加え、他のPSD症例(Pachychoroid neovasculopathy, ポリープ状脈絡膜血管症)、正常眼においても同様に検討を行う。また、偏光感受型OCTにおいても、同様に強膜組織の定量的評価法を確立させ、同様に解析を行っていく。 現在、症例の集積が完了しており、強膜構造をどのように定量化するか模索中である。これまで前例のないデータ解析であるため、定量化の方法を模索しつつ、必要があれば画像解析ソフトの開発を行う予定である。 これら加えて脈絡膜構造や血流を解析、定量化し、PSDにおいて強膜厚、強膜構造・組織学的な変化が脈絡膜構造、脈絡膜血流にどのような影響を与えるか解析する。加えて解析されたデータから強膜構造や渦静脈による既存のPSDに対する加療に対する影響を検討し、強膜構造を元により適正な加療を目指す。
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Causes of Carryover |
現状では高深達スウェプトソース光干渉断層計(OCT)による脈絡膜の撮影は可能であるが、脈絡膜に対する画像解析においては脈絡膜の詳細な構造や血管分布、血管構造や血管フローを詳細に描出するのは既存のソフトでは不十分である。今後脈絡膜構造をより詳細に描出できるソフトの開発を行う必要がある。前眼部(OCT)(CASIA2)を用いた強膜構造の画像解析はさらに遅れており、我々は超高解像度前眼部OCTを用いて強膜厚を測定する手法を開発したが、強膜構造や剛性、強膜を貫通する渦静脈の描出には至っていない。眼表面の構造から強膜を確実に描出し、さらに強膜構造や深部の強膜描出、強膜を貫通する渦静脈の描出や渦静脈の血流速度の測定には強膜断層画像解析に関わるコンピュータ及びソフトウエアの開発が不可欠である。 また、偏光OCTにおいても画像データは得られているが、データを画一化し研究に用いるには新たな手法や画像解析が必要なことが判明している。現状は画像解析ソフトの開発が必要であり、各メーカーの技術者派遣の滞り、現地でのミーティングを重ねているが、画像解析に関わるコンピュータ及びソフトウエアの開発が滞っている。現状は現在撮影したデータを用いて解析をwebミーティングを積極的に行い、ソフトウェアアップデートを近日中に予定している。
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Research Products
(8 results)