2023 Fiscal Year Research-status Report
インテリジェントDDSを目指した赤外応答性ハイドロゲルの開発
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23K16042
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
サファイー シルス 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(歯学系), 客員研究員 (40968393)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 薬剤徐放性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、外部刺激としての赤外光に応答して「必要なタイミング」で「必要な量」の薬剤を放出可能な薬剤徐放材料の開発を試みる。典型的な温度応答性ポリマーとは異なり、温度上昇によりゾルへの相転移を示す、Upper Critical Solution Temperature(UCST)型のポリマーを用いる事で、加温により内包した薬剤が放出されるシステムを構築する。このシステムを外部刺激により効率的に動作するため、赤外光照射に対して高い発熱応答を示すカーボンナノチューブと融合する事により、赤外光を照射した部分のみが速やかにゾルへと相転移を示し、薬剤を放出する「インテリジェントDDSを目指した赤外応答性ハイドロゲルの開発」を試みる。 本課題の熱上昇により可塑化するUCST型温度応答性ポリマーの試作については、N-イソプロピルアクリルアミド、アクリルアミド、ポリエチレングリコールに架橋剤としてメチレンビスアクリルアミド、更に物理的な架橋剤として12タングストリン酸を混合した水溶液を作成し、この溶液に重合開始剤として過硫酸カリウムを加え、加熱・重合させることにより、目標とした透明なゲルが得られた。得られたゲルは反応終了後には温度減少に伴い、白濁することが確認された。透過率測定により、ポリエチレングリコール含有量の増加に伴い相転移温度(透明・不透明の入れ替わる温度)が低下するUCST型のゾル-ゲル転位応答を示すことが確認された。ゲル相転移温度を跨いだ温度変化を加える事により可逆的なゾル-ゲル相転移が観察された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本提案のキーとなる温度上昇により可塑化するLCST型ポリマーを作成し、熱応答による薬剤モデルのポリマーからの放出に成功した。また赤外線照射によるCNT の熱応答特性を検討した。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度までの検討で得られた温度応答性ポリマーゲルと光-熱変換効果を持つカーボンナノチューブとのハイブリッド材料を作成し、外部刺激としての赤外光照射によるゾル‐ゲル応答性とそれに伴う薬剤徐放挙動について検討する。また、カーボンナノチューブ(CNT)をベンゼン中へと分散し、コハク酸無水物を添加し、加熱・還流処理を行う化学処理を行ったところ、CNT表面へとカルボン酸の提示に成功し、水溶液への十分な分散が可能となった。この処理を行ったCNT誘導体を上述で得られたゲルへと含有させたところ、赤外光照射による効率的な温度上昇を示した。添加したゲルへの含有量に比例した温度上昇挙動が見られたので、次年度はその条件検討を実施する。
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Causes of Carryover |
消耗品として、現有の物品を優先的に使用したため、新規購入額が予定よりも少額になった。作製試料の物性測定装置の使用方法の習得に時間を要した。未だ出張業務についての制限が発生しており、情報収集などを目的とした出張が十分に行えず、旅費としての支出が減少した。また、薬剤情報に伴う細菌増殖抑制効果の評価用の装置故障のため、代替機の共同購入を検討したが、新規導入機器・共同購入者の選定に時間を要したため、次年度使用額が生じた。次年度は細菌定量措置の購入に充てる予定である。
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