2023 Fiscal Year Research-status Report
リポクオリティ依存的な気管支喘息病態形成機構の解明
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23K16103
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
前川 翠 東北大学, 大学病院, 助教 (50885134)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 気管支喘息 / 長鎖遊離脂肪酸 |
Outline of Annual Research Achievements |
我々はこれまでに長鎖遊離脂肪酸受容体であるFFAR1とFFAR4が気管平滑筋上に発現すること、そしてn-6及びn-9脂肪酸が気管平滑筋を収縮させ、気道リモデリングももたらすことを明らかにしている。これらの知見は、肥満者の血中に過剰に存在するn-6及びn-9脂肪酸が気管平滑筋上に発現するFFAR1に作用することで、「肥満」と「気管支喘息」を結びつける鍵分子として働くことを示唆している。しかしこれまで、n-6及びn-9脂肪酸がどのような機序で気道炎症や気道粘液過剰分泌をもたらすのかについては明らかにされていない。 本研究ではヒト気管上皮細胞にn-6またはn-9脂肪酸を投与した場合に、MEK/ERK経路を介してMUC5AC産生を促進するかを観察することで、長鎖脂肪酸による気管支喘息病態制御機構の全容を解明することを目的としている。これまでに、ヒト気管上皮細胞(16HBE14o- cells)にオレイン酸を投与するとERKリン酸化が生じることを確認した。 今年度は肥満者に特異的に治療効果をもたらす新規気管支喘息治療薬の探索および有効性評価を目的として、ヒト気管上皮細胞に対するGW1100の影響を評価した。GW1100はFFAR1拮抗薬であり、気管上皮上のFFAR1を拮抗することで、遊離脂肪酸を介した気管支喘息症状を抑制させることが期待できるため選出した。具体的な方法としては培養したヒト気管上皮細胞(NCI-H292 cells)にGW1100およびオレイン酸を投与し、MEK/ERK経路を介したMUC5AC産生が抑制されるかをウェスタンブロット法にて観察した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
ウェスタンブロット法による結果が不安定であり、当初の予定より実験の進行が遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
GW1100の他に、脂肪分解阻害薬(ニコチン酸誘導体:脂肪組織からの遊離脂肪酸放出を抑制するため、肥満者における気管支喘息症状を抑制させることが期待できる)や 血糖吸収阻害薬(α-グルコシダーゼ阻害剤),インスリン抵抗性改善薬(ビグアナイド剤:血糖降下作用の他に,遊離脂肪酸やTNF-αの血中濃度上昇抑制作用を有する)を培養したヒト気管上皮細胞(初代培養細胞, NCI-H292 cells, 16HBE14o- cells)に投与し、肥満者に特異的に治療効果をもたらす新規気管支喘息治療薬の探索や有効性の評価を行う。
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Causes of Carryover |
研究に遅れが生じていること、また研究費の使いきりを念頭に置かずに都度購入しているため、年度末に剰余金が生じた。翌年度は、この剰余金を試薬・消耗品類の購入に充てる。
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