2023 Fiscal Year Research-status Report
口腔扁平上皮癌におけるケモカイン不活化酵素DPP-4による腫瘍免疫の抑制機構の解明
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23K16131
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Research Institution | Meikai University |
Principal Investigator |
松本 安吏 明海大学, 歯学部, 助教 (80965129)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | CXCL9 / CXCL10 / CXCL11 / DPP4 / ケモカイン |
Outline of Annual Research Achievements |
インターフェロン(interferon: IFN)誘導性ケモカインC-X-C motif ligand 9 (CXCL9)、CXCL10、CXCL11は、血管新生抑制作用を有し、活性化したT細胞を癌病変へ動員することにより、抗腫瘍性を示すケモカインである。申請者らはこれら3種のケモカインの抗腫瘍作用について検討するために、マウス扁平上皮癌細胞株(SCCVII)にケモカイン発現ベクターを導入したケモカイン安定発現細胞株を作製し、ヌードマウス背部へ移植した。その結果、CXCL9、CXCL11発現細胞では顕著な腫瘍増殖の抑制が認められたが、CXCL10発現細胞では抑制作用は認められなかった。これらケモカインのアミノ酸配列の解析からCXCL10の抗腫瘍効果の低下は、膜結合型プロテアーゼ dipeptidyl peptidase 4(DPP-4)によるCXCL10の切断がケモカイン活性の不活化を招いた可能性が考えられた。そこで本研究課題は、口腔扁平上皮癌におけるDPP-4による腫瘍免疫の抑制メカニズムを明らかにすることを目的として行う。CXCL10のプロリンをロイシンに置換した変異体、CXCL9およびCXCL11のロイシンをプロリンに置換した変異体を作製し、口腔扁平上皮癌細胞株SCCVII細胞に遺伝子導入し、安定発現細胞株を作製した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
DPP-4切断感受性が抗腫瘍作用に影響するか否かを検討するために、CXCL10プロリン残基をロイシンに置換した変異体、CXCL9およびCXCL11のロイシン残基をプロリンに置換した変異体を作製した。これらケモカインの変異体を口腔扁平上皮癌細胞株SCCⅦ細胞に遺伝子導入後、薬剤選択を行い、安定発現株を樹立した。現在、得られた安定発現株のケモカイン発現量の測定および近交系マウスへの移植の準備を行なっている。ケモカイン変異体の作製およびケモカイン変異体安定発現株の樹立に時間を要したため、今年度の実験計画で予定していたケモカイン変異体安定発現株の近交系マウスへの移植まで至らなかったことから、進捗状況としてはやや遅れているとした。
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Strategy for Future Research Activity |
CXCL9、CXCL10,CXCL11変異体安定発現株におけるケモカイン発現量の解析後、近交系マウス(C3H/HeJ)に移植し、抗腫瘍活性および腫瘍実質におけるDPP-4発現を野生型の場合と比較検討を行う。また、抗DPP-4/CD26抗体、抗α smooth muscle actin抗体、抗fibroblast activation protein α抗体を用いた免疫組織化学的解析によるDPP4発現細胞の同定や腫瘍組織に浸潤したT細胞やマクロファージの動態について各種マーカーの検討を行いDPP-4発現と免疫担当細胞の浸潤動態と関連性を解析する。さらにDPP-4阻害薬を用いた場合のIFN誘導性ケモカイン発現腫瘍組織の動態、ヒト口腔扁平上皮癌症例におけるDPP-4発現と臨床的背景の関連性を検討する。
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Causes of Carryover |
SCCVII細胞に遺伝子導入後、薬剤選択にて得られた安定発現株のケモカイン発現量解析を行い、安定発現細胞株を近交系マウス(C3H/HeJ)に移植し抗腫瘍活性を検討する。その後は病理組織、免疫組織学的検討、ならびに遺伝子発現解析を行う予定である。今年度マウスに安定発現細胞株を移植する予定であったが、安定発現細胞株の解析が終了していないため次年度とした。
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