2023 Fiscal Year Research-status Report
3次元培養技術を用いた口腔がん微小環境モデルの構築と新規治療標的の探索
Project/Area Number |
23K16143
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
羽賀 健太 新潟大学, 医歯学総合病院, 医員 (60962777)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 口腔がん / がん関連線維芽細胞 / 3次元培養 / がん微小環境 / 患者由来がんモデル |
Outline of Annual Research Achievements |
癌組織は癌細胞とその周囲の間質から構成され、腫瘍の形成において相互に影響しあう特 殊な環境下にあることからがん微小環境と呼ばれている。 近年、癌の増殖・浸潤・転移においては、癌細胞自体の性質だけでなく癌とその周囲組織との相互作用が強く関与することが明らかになり、特に間質の主要な細胞成分であるがん関連線維芽細胞 (Cancer-associated fibroblasts: CAFs) による癌の悪性化の促進は強い関心を集めている。 申請者は、口腔癌細胞とCAFsの相互作用をin vitro、in vivo、ヒト口腔癌病理標本で検討し、CAFsの分泌するTGF-βが癌の進展に関与することを証明してきた。 本研究では、この複雑ながん微小環境を理解するために3次元培養技術を応用し、癌細胞と口腔癌由来のCAFsを用いたin vitroシステムである口腔がん微小環境モデルを確立し、CAFsが誘導される過程での癌細胞の浸潤能や増殖能への影響を分子生物学的および病理組織学的に解析を行う。このがん微小環境の細胞間ネットワーク解明は、癌治療における新規治療戦略へとつながる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
口腔がん患者対して外科的切除時に癌組織と正常組織を一部採取しCAFsおよび正常線維芽細胞(Normal oral fibroblasts: NOFs)の単離培養をすることで、患者由来CAFsおよびNOFsの細胞群の樹立に成功した。現在の症例数は7例である最初の2例以降、対となる同一患者由来のCAFsとNOFsの両方の培養が可能となり、プロトコールを確立させた。切除標本に対しては、CAFsのマーカーであるαSMAの免疫染色を行い、浸潤部間質領域のαSMA陽性を確認した。分離培養したCAFs群はNOFs群とは異なり、αSMA陽性であることから、CAFsと同定した。 3次元培養モデルの作製し、組織学的評価を行ったところ、CAFs群ではOSCC細胞は間質への有意な浸潤を認めたが、NOFs群では浸潤を認めなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
OSCC患者由来のCAFsの安定した分離培養に成功し、口腔がん微小環境モデルを確立した。CAFsの存在がOSCC細胞の浸潤能を促進することから、OSCCとCAFsの相互作用は癌の浸潤に重要な役割を果たすことが示された。引き続きCAFsの採取を実施し、CAFsのサブタイプについても検討していき、作製したがん微小環境モデルを用いて免疫組織化学的検討を進めていく。
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Causes of Carryover |
今年度は症例の蓄積と3次元培養モデル製作に注力し、CAFsとNOFsの遺伝子解析や免疫組織学的検討は次年度に予定することとしたため、一部予算を次年度に繰り越すこととしたため。
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