2023 Fiscal Year Research-status Report
血中循環腫瘍細胞の力覚応答に基づくクローン選択メカニズムの解明と治療法の開発
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23K16158
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
前城 学 熊本大学, 病院, 医員 (40906145)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | CTCs / 転移 / CTCクラスター / メカノトランスダクション / DTCs |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、CTC クラスターの形成とその高度転移能を支える分子基盤を力覚応答の観点から解明し、新たな癌の診断・治療戦略を創出することを目指している。これまで、メカノストレスが癌の進展にどのように寄与しているかは不明であった。また、CTCs 自体が稀であるため、CTC クラスターの機能的特性についてはほとんど判っていなかった。申請者の提唱する「力覚応答性に基づく転移過程におけるクローン選択」という新しい概念に対して、その分子基盤の構築を試みる本研究は極めて高い独創性を有する。それ故、研究成果は、転移をはじめとした癌進展のメカニズムの理解に新たな枠組みを提供する可能性がある。さら に、癌細胞の力覚応答を攪乱させて血流の機械的力で CTCs を排除するといった、生理的な力を取り入れた合成致死誘導療法を含む、これまでにない革新的な治療戦略の創出に発展する可能性を持っている。さらに、循環血流という癌種や個人にほとんど依らない力学的環境に着目することで、様々な癌で共通した転移機構の理解や治療法の開発に寄与する可能性がある。申請者は、安定クラスター形成後のアノイキス耐性は、細胞種に依らないことを実証している。興味深いことに、CTC クラスター起源クローンは、静置環境ではなく FSS 下でのみアノイキス耐性を示したことから、細胞間接着マシナリーとメカノストレスの協調が特有のメカノトランスダクションを誘導することでアポトーシス耐性を含む転移向性プログラムを発揮させていると仮説を立てた。申請者はFSS後の各種癌細胞株から回収したクラスター、シングルセルでmRNA-seqを行っており、現在解析中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究の先行研究で、FSS 負荷浮遊培養モデルを確立しており、株式会社村田製作所との共同研究を通して、高精度金属フィルターによる細胞クラスターおよびシングルセルの分離回収ができている。この非侵襲的かつ迅速な分離フローは、患者血液検体にも適用可能であると考えているが、現段階では患者血液からの純度の高い癌細胞回収には至っていない。その一方で、本研究はAMED の創薬等先端技術支援基盤プラットフォーム(BINDS)から支援を受けており(承認番号:BINDS0035)、各種癌細胞株から回収したクラスター、シングルセルを用いてmRNA-seqを行っており、現在解析を行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
複数の癌細胞株を用いて、安定な細胞間接着をもつ浮遊クラスターに特有の、FSS 依存的遺伝子発現変化を経時的に解析する。それらの解析は細胞培養実験や担癌マウスモデルで行い、HNSCC 患者由来 CTCs や Patients-derived xenograft (PDX)/ CTC-derived xenograft (CDX) マウスモデル、公共データベースを用いて再構成し、治療標的の特定に向けて展開させる。
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Causes of Carryover |
2023年度に予定していた購入物品や解析依頼予定であったものが、業者都合もあり間に合わず、またそれによって論文投稿も遅れているため、次年度使用額として経費が生じた。
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