2023 Fiscal Year Research-status Report
多発性嚢胞腎モデルにおける運動療法とアドレナリン受容体作動薬の併用効果
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23K16635
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
三浦 平寛 東北大学, 大学病院, 助教 (30845805)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 多発性嚢胞腎 / 運動療法 / アドレナリン受容体作動薬 / クロニジン |
Outline of Annual Research Achievements |
常染色体優性多発性嚢胞腎(ADPKD)は、腎嚢胞の増大・増加とともに進行性に腎機能が低下し、末期腎不全に至る疾患である。有効な治療法は、V2受容体拮抗薬トルバプタンのみであるが、高価な上に尿量が多量となるため、QOLを低下させ、治療脱落率も高い。そこで安価でQOLを低下させないようなADPKDへの治療法が期待されている。我々は多発性嚢胞腎モデルラット(PCKラット)において、長期的運動の腎・肝嚢胞増大や臓器障害への有効性を報告し、ADPKDへの運動療法の可能性を示した。嚢胞発症機序には、腎集合管におけるバソプレシンV2受容体刺激による細胞内cAMP過剰産生が関係し、細胞内cAMP過剰産生には、Gsタンパク質共役型受容体であるV2受容体刺激によるアデニル酸シクラーゼ(AC)の活性化が関与している。AC活性を抑制するGiタンパク質共役型受容体であるα2アドレナリン受容体(α2-AR)に関する報告はこれまでなされていない。そこで本研究では、PCKラットへの長期的運動とアドレナリン受容体作動薬との併用効果について検討することとし、まずα2-AR作動薬単独投与での検討を行った。 PCKラットにα2-AR作動薬クロニジンを12週間投与したところ、クロニジンは尿量に影響を与えずに尿蛋白を抑制した。組織学的検討では、クロニジンは糸球体上皮障害、腎嚢胞増大、嚢胞周囲の細胞増殖を抑制した。細胞増殖因子関連のタンパク質解析では、クロニジンは腎cAMP含有量を低下させ、B-Raf発現、ERKとS6リン酸化を抑制したが、mTORやS6K1リン酸化には影響しなかった。これらの結果よりPCKラットにおいてα2AR作動薬は尿量増加を伴わずに腎嚢胞増大を抑制し、その機序にはcAMP/B-Raf/ERK/S6経路の抑制が関与している可能性が示唆された。α2-AR作動薬はADPKDの新規治療薬となる可能性がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初、初年度はV2受容体拮抗薬トルバプタンの検討を行う予定であったが、薬品メーカーからのトルバプタンの提供が困難となったこと、トルバプタンの購入も検討したが費用がかなり高額となること、からトルバプタンでの検討を一旦保留した。 α2受容体作動薬であるクロニジンでの検討を開始し、当年度で概要の通りある程度予想された成果が得られたため、現在別のα2受容体刺激薬であるグアナベンズ、α2受容体拮抗薬であるヨヒンビン、β受容体拮抗薬であるプロプラノロールらをPCKラットに投与するという検討を行った。それらの結果については現在解析中である。
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Strategy for Future Research Activity |
α2受容体刺激薬グアナベンズ、α2受容体拮抗薬ヨヒンビン、β受容体拮抗薬プロプラノロールらそれぞれを投与したPCKラットにおいて、腎・肝嚢胞、腎・肝線維化、腎糸球体硬化といった組織学的解析、cAMP/B-Raf/ERK経路やmTOR/S6経路といった細胞増殖因子の蛋白質解析を行う予定である。 目処がつけばトルバプタンにおいても検討を行う。
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Causes of Carryover |
本研究で使用するPCKラットの購入費用が高額であり、その費用にあてるため次年度に持ち越した。
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