2023 Fiscal Year Research-status Report
The Impact of Emotional Experiences of Pride on Long-Term Goal Achievement Behaviors in Elite Athletes
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23K16740
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Research Institution | National Agency for the Advancement of Sports and Health |
Principal Investigator |
近藤 みどり 独立行政法人日本スポーツ振興センター国立スポーツ科学センター, スポーツ医学・研究部, 契約研究員 (70963932)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | pride / athletes / goal-achivement |
Outline of Annual Research Achievements |
長期期目標を達成し得る要因の解明は、スポーツをはじめ様々な分野において重要な課題である。本研究では、アスリートの「誇り」感情に着目し、長期的な目標達成を可能にする方略の解明を目指す。3年計画の1年目にあたる2023年度は、大学生アスリートを対象に、1週間隔3時点で誇りの感情体験と自ら設定した課題の目標達成度およびパフォーマンスの自己評価について縦断的に調査し、両者の因果関係を検証した。 まず、誇りの感情体験の構造を確認したところ、誇りの感情体験は次の4つに整理された。第一に‘堂々とした’‘自分らしい’といった感情語からなる「本来感」、第二に‘いきいきした’‘挑戦的な’などの感情語からなる「高揚感」、第三に‘自慢げな’‘自画自賛の’等からなる「優越感」、そして第四に‘成功した’‘やりきった’といった「充足感」である。 次に、それぞれの誇りの感情体験と目標達成度との因果関係を検討した結果、目標達成度が高いと「本来感」「高揚感」「充足感」を感じる一方で、「優越感」とは因果関係が認められなかった。さらに、パフォーマンスとの関係においては、「本来感」「高揚感」「充足感」がパフォーマンスを促進し、パフォーマンスが向上することで、さらにこれらの誇りの感情体験が促進されるといった循環効果が示唆されたが、「優越感」では確認されなかった。 これまで、誇りを感じると、困難な課題に取り組む時間が長くなること等、誇りが課題遂行を促進することが報告されている。また、北米を中心とした誇りの研究では、真正な誇りが課題遂行を予測するのに対して、傲慢な誇りは関連しないことが明らかにされている。本年度の調査結果は、これら先行研究を支持するとともに、新たに本邦の文化的背景に基づいた4分類の誇りの概念から達成行動との因果関係を示すことができた点、そして因果関係を示す誇りの感情体験が特定された点で一定の成果を得た
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は国内トップアスリートを対象として調査を展開する計画であったが、大学生アスリートへの探索的な縦断調査にとどまった。理由として、トップアスリートを調査対象とする困難さが挙げられる。倫理的配慮から指導者や連盟を通じて調査を依頼することが難しく、多変量解析に耐え得るサンプル数を確保できなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度の調査では、4種類の誇りの感情体験のうち特定の感情が目標の達成を促進することが明らかになった。当該結果をうけて、2024年度はそれに影響を与えると予測される動機づけ雰囲気や目標志向性との関連を縦断的に調査する。当初の計画では、トップアスリートを対象としていたが、サンプル数が必要な多変量解析を用いる実証研究では遂行が難しいと判断したため、対象を大学生アスリートに変更する。今後は2023年度、2024年度の実証研究を踏まえて、2025年度にトップアスリートへのインタビュー調査を実施し、質的に知見を深める予定である。
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Causes of Carryover |
次年度使用額は前倒し支払い請求額の余剰であり、余裕をもって請求額を見積もったことによる。今年度は、学会参加・研究成果発表、調査や研究の打ち合わせに係る国内旅費、分析ソフト、研究関連図書等に係る設備備品・消耗品、そして英文校閲、webアンケートシステムのサブスクリプション等に係るその他経費で使用する予定である。
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