2023 Fiscal Year Research-status Report
近代日本における学生武道の実相:質的および量的解析手法を用いた武道史研究
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23K16754
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Research Institution | Niigata University of Health and Welfare |
Principal Investigator |
佐藤 皓也 新潟医療福祉大学, 健康科学部, 講師 (80850437)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | デジタル技術 / 競技スポーツ / 旧制高校 / 連続性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は近代における学生武道の実相を解明し、質的および量的解析手法を用いた新しい武道史研究モデルの基盤構築を目指すものである。そのために、本研究では学生剣道を事例にし、その活動実態を歴史的資料(1937-1945)から明らかにすることを目的としている。本年度は主に、明治期から大正末期における学生剣道の活動について以下の項目を検討した。 (1)武道史におけるデジタル技術の導入 デジタル技術を武道史に導入する試みの一つとして、計量テキスト分析と近代史料(1868-1945)のテキスト化ソフト(FROG AI-OCR)を使用し、学生剣道史を言葉の数で分析した。分析1では、旧制第三高等学校の剣道部記事は大会や試合に関する話題が多く、九つのグループに分類できることが判明した。分析2 では、旧制第三高等学校の剣道部記事において、競技性と伝統性というコンセプトを設定し,二性質の時代推移を量的に把握した。本技術の限界としては,語の「時代性」を評価できないことや言葉や文の意味を解釈できないことを確認した。
(2)新たな対象の歴史的研究:旧制第一高等学校 明治30年代以降、主に西日本の学生剣道界はルールや審判制を整備し、剣道の競技スポーツ化を推進したが、旧制第一高等学校はそうした動向とは異なっていたため、同校を新たな研究対象とした。本研究では、旧制第一高等学校撃剣部(剣道部)が提唱した無検証(自己審判制)の精神性が、江戸中期以降の稽古や試合から一高撃剣部の実践、そして剣道の理念制定に繋がる系譜を明らかにした。本研究により、明治期以降の学生剣道史と戦後剣道史との連続性を確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
明治期から大正末期における学生剣道の活動実態を明らかにすることができている。また、本研究では当初の予定どおり、歴史的な資料を言葉の量で解析する方法を確立できたことも理由として挙げられる。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度に検討した二項目(1)武道史におけるデジタル技術の導入(2)新たな対象の歴史的研究:旧制第一高等学校によって日中戦争以降(1937-1945)を分析するための基本的事項が整った。そこで今後の研究では、日中戦争以降における学生剣道の活動を明らかにする。日本の学生武道史を紐解くと、日中戦争時代に空白の期間がある。1937年から1945年は国家レベルで武道の伝統性が問い直された。学生剣道界では実戦の観点で大会ルールを三本勝負から一本勝負に変更した経緯までは判明しているため、競技スポーツとしての剣道を志向した学生は、1937年以降に伝統性を問い直し、その一部を吸収したという仮説を立て、これを歴史的に検証する。
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Causes of Carryover |
「人件費・謝金」は研究代表者と協力者が資料収集を実施し、協力者が資料を評価するために、設定した金額であった。本年度は、一人で資料を収集することができたため、0円となっている。次年度は資料収集がメインとなるため、主に長期休暇期間を利用して使用する。
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