2023 Fiscal Year Research-status Report
腸管を起点とした全身の生体機能維持に関わる新規脂肪酸受容体の機能解明
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23K16794
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
池田 貴子 京都大学, 生命科学研究科, 助教 (60948686)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 脂肪酸受容体 / 腸管を起点とした生体恒常性の維持 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、新規脂肪酸受容体GPR164の腸管における機能を明らかにすることを目的とする。脂肪酸受容体はエネルギー代謝や免疫機能など多岐に渡る生体の機能制御に関わり、これまで最も創薬の標的とされてきたGPCRであることから、脂肪酸受容体の機能を明らかにすることは、代謝性疾患を始めとする様々な疾患の治療薬開発につながる可能性がある。新規の脂肪酸受容体であるGPR164は、生体における機能が未知であることから、本研究ではGPR164遺伝子欠損マウスを用いて、生体のGPR164の機能を調べる事とした。GPR164は腸管ホルモンの分泌に関わる可能性が報告されており、また酪酸がリガンドとして示されていたことから、生体内で最も酪酸が豊富に存在する腸管において重要な役割を担うのではないかと考えた。そこで、腸管機能、特に腸管バリア機能に焦点を当て、in vivo、in vitroの両面から様々な検討を行った。GPR164遺伝子欠損マウスの腸管組織切片を用いた形態観察や組織免疫染色によるタンパク質の発現変化、RNAseqによる網羅的な遺伝子発現解析、KEGGパスウェイ解析によるGPR164が関わるシグナル伝達経路の同定、腸管バリア機能の評価、など様々な角度からの検討により、GPR164は腸管バリア機能の制御を介して腸管恒常性維持に関わることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
マウスを用いた実験は時間を要するが、想定より多くの検討を重ねることが出来、GPR164の腸管における機能や、機能制御に関わる分子機序の解明など、様々な知見を得ることが出来た。また、培養細胞を用いた検討も行い、マウス個体で見られる表現型と一致するデータも得られた。このように、in vivo、in vitroの両面から検討を行い、機能未知であったGPR164の機能の一端を着実に明らかにすることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、GPR164による腸管恒常性維持のより詳細な分子機序の解明が必要である。腸管におけるGPR164の機能として、腸管バリア機能に焦点を当て検討を行っており、培養細胞やマウス個体を用いた表現型解析から、GPR164が腸管バリア機能に重要であることを見出している。さらに、GPR164による腸管バリア機能制御に関連すると考えられるシグナル伝達経路を同定するに至っている。しかし、これらシグナル伝達経路の異常が何故起こるのか、については明らかでない。また、腸管バリアと密接に関わりのある腸内細菌との関連についても検討する必要がある。このことから、腸管バリア機能の制御に関わるシグナル経路とGPR164との関り、及び腸内細菌に対する影響について今後検討していく。
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