2023 Fiscal Year Research-status Report
食事性亜硝酸塩のNO不足NASHの病態悪化に対する抑制効果とメカニズムの解明
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23K16830
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Research Institution | Kinjo Gakuin University |
Principal Investigator |
薗田 邦博 金城学院大学, 生活環境学部, 准教授 (80454338)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 硝酸塩/亜硝酸塩 / NASH / 一酸化窒素 / 心疾患 / 肝疾患 |
Outline of Annual Research Achievements |
非アルコール性脂肪肝炎(NASH)は、肝がんのみならず動脈硬化性疾患での死亡率が高く臨床上重要な疾患に位置付けられている。しかし、NASHに対する有効な治療法は確立されていないことから、NASHの病態解明と食事療法の開発が喫緊の課題となっている。NASHと動脈硬化をつなぐ共通因子には、生体内の一酸化窒素(NO)産生低下が深く関わっている。本研究では、NO合成阻害剤を申請者らが開発した食餌誘発性のNASHモデル動物に与え、亜硝酸塩のNASHに対する有効性を明らかにすることを目的としている。 近年、本研究と同様に高脂肪食とNO合成酵素阻害剤をマウスやラットに同時に与えることで駆出率が保持された心不全(HFpEF)を発症することが報告された(Schiattarella et al.Nature 2019, Zhang et al. J Cardiovasc Pharmacol 2023 )。HFpEFは、現在治療法が確立できていない疾患であり、予防や治療法の確立が喫緊の課題となっている。申請者は、SHRSP5/Dmcrラットに高脂肪食を与えることにより、HFpEFで見られる求心性の心肥大を起こすことを明らかにしている。さらに、本研究では高脂肪食に加えNO合成酵素阻害剤を与え線維化まで進行させることから、心機能に影響を与えることが予想された。そこで今回、wistarラットを用いて高脂肪食及びNO合成阻害剤併用して超音波画像診断装置(心エコー)による心臓機能評価の予備的検討を実施した。その結果、高脂肪食とNO合成酵素阻害剤を投与すると心機能が保持されているにもかかわらず心肥大や線維化を起こしたことからHFpEFと類似した病態を示すことが分かった。 今後は、SHRSP5/Dmcrラットに高脂肪食とNO合成阻害剤を与えNASHと心疾患を発症するモデル動物を用いて亜硝酸塩の有効性を評価する。また、当初の研究計画に含んでいなかった「心臓の機能評価」を新たに追加して実施する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度においては、SHRSP5/Dmcrラットを用いて高脂肪食とNO合成酵素阻害剤を同時に与え、NASHと心疾患を同時に発症させたモデルラットによる亜硝酸塩の有効性を明らかにする予定であった。しかし、近年の報告と申請者の研究から本モデルラットの心不全が予防法や治療法が確立できていない駆出率が保持された心不全であるHFpEFと同様の病態を示す可能性が考えらた。そこで、本年度は心エコーを用いて高脂肪食とNO合成酵素阻害剤による心不全ラットの心臓機能評価を予備的に実施した。その結果、高脂肪食とNO合成酵素阻害剤の併用がHFpEFと類似した病態を示すことが分かった。 そこで、本研究では心エコーによる心臓の機能評価を実施しない予定であったが、今回の予備実験結果から心エコーによる心臓機能評価を新たに追加することにした。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画においては昨年度、NASHと心疾患を同時に発症するモデルラットを作成し、血圧測定や解剖を実施する予定であった。しかし、最近の研究から本実験で使用するモデルラットにおいて、心臓の駆出率は正常でありながら心肥大や線維化を引き起こし、心不全を発症する可能性が考えられた。そこで、心臓の機能を測定できる心エコーを用いて予備検討を実施し、高脂肪食とNO合成酵素阻害剤の併用により心臓機能は保持されているにもかかわらず心肥大や線維化を発症させることが分かった。 そこで、本年度は当初の予定通りSHRSP5/Dmcrラットを用いて高脂肪食とNO合成酵素阻害剤を同時に与え、NASHと心疾患を発症させたモデルラットを作成し、亜硝酸塩の有効性を明らかにする。本年度の研究の具体的な内容は、NASHと心疾患を発症するモデルラットを作成し、心機能評価と血圧測定を実施した後、解剖を行い血液と臓器を採取し、血液検査と病理標本の評価を実施する。
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Causes of Carryover |
本年度当初予定していた研究の一部が実施できなかったため、次年度改めて研究を実施する。次年度使用額分については、NASHモデル動物(SHRSP5/Dmcrラット)と餌(高脂肪食)の購入に用いる。
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