2023 Fiscal Year Research-status Report
次世代給電システムが抱える電圧振動問題を解決する制御手法の提案
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23K16964
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Research Institution | National Institute of Technology, Toyama College |
Principal Investigator |
吉田 晃基 富山高等専門学校, その他部局等, 助教 (30910442)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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Keywords | 直流給電 / ネットワーク / 遅延フィードバック / 定電力負荷 / 適応制御 |
Outline of Annual Research Achievements |
複数の発電設備から高い効率で直流電力を負荷に供給する「直流給電システム」が次世代の給電方式として注目されている.しかし,直流給電システムでは電圧レベルの変換に「DC/DCコンバータ」が採用されており,複数のコンバータが相互作用することで,動作点電圧の不安定化・振動問題が生じることが知られている.この問題を解決する方法の1つとして,カオス制御の分野で考案された「遅延フィードバック制御法」を用いて,動作点電圧を安定化する試みがされている.しかし,従来の制御法は電源や負荷の追加・削除に伴うシステムパラメータの大きな変化を想定しておらず,このままでは今後の社会における給電網の大規模化には対応できないという問題があった. そこで,まずはじめに,電源や負荷の追加・削除が給電システムの電圧の振動周波数を変化させることを明らかにした.従来の遅延フィードバック制御法による安定化の成否は,その制御パラメータである「遅延時間」と電圧の振動周波数の関係に大きく左右される.従って,電源や負荷の追加・削除に伴って振動周波数が変化することで,制御に失敗し,給電システムの不安定化を招く可能性があることを明らかにした. つぎに,この問題を解決するためには,振動周波数の変化に適応して遅延時間を調整し,「定常状態」(直流給電システムの動作点の電圧)を安定化する必要がある.しかし,そのような調整則はこれまでに提案されていなかった.そこで新たに,定常状態の安定化を可能にする遅延時間の適応的な調整則を考案した(結果は国際ジャーナルへ投稿中).
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
遅延フィードバック制御法における遅延時間の適応的な調整則が先行研究でいくつか提案されている.そこで,当初はそれらの適応的な調整則を直流給電システムの安定化に応用する予定であった. しかし,それらの先行研究の調整則は「周期解」と呼ばれる挙動が安定化の対象であった.一方で,直流給電システムにおいては,「定常状態」と呼ばれる挙動を安定化する必要がある.遅延フィードバック制御法による周期解と定常状態の安定化の間には異なる性質が存在し,先行研究の調整則を直接適用することはできなかった.そこで,先行研究の手法を参考に,新たに定常状態を安定化するための遅延時間の調整則を考案した.この調整則がうまく機能することは現在,数値シミュレーションで確認できている.
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Strategy for Future Research Activity |
考案した遅延時間の調整則を電気回路で実装し,回路実験を行うことで,実際のシステムの安定化に有効であることを検証する. また,この調整則によって定常状態が安定化できる条件を,分岐解析等に基づいて明らかにする.
直流給電システムの望ましい定常状態と望ましくない定常状態の両方を考慮して,望ましい定常状態のみを安定化する方法を提案する.
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由は主に,次の2つを2023年度中に執行しなかったためである. (1) 現在投稿中の国際ジャーナルの出版に向けて必要な経費(英文校正費等).(2) 回路実験に必要な物品の購入費用. (1)については,今後の査読や出版のタイミングに応じて執行する予定である. (2)については,2023年度は回路実験の研究よりも,理論と数値シミュレーションの研究を優先したため,執行しなかった.2024年度は,これらの理論と数値シミュレーションの結果が実際の電気回路でも生じることを検証する必要があるため,2024年度の予算とともに執行する予定である.
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