2023 Fiscal Year Research-status Report
少数医療データに適した量子因果探索アルゴリズムの開発
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23K16996
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
川口 英明 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 特任准教授 (30813969)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 量子コンピューティング / 因果探索 / 医療リアルワールドデータ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の代表者は、因果探索アルゴリズムのLiNGAMの独立性指標に量子カーネルを用いたqLiNGAMを開発し、比較的少数の医療データで既存手法よりも妥当な因果構造を推定できる事例を示したが、誤差変数が非正規かつ独立・各変数が線形関係・因果グラフが有向非巡回グラフであると仮定するLiNGAMをベースにしているため、変数間の非線形関係や未観測共通原因が存在する場合には妥当な因果関係が得られない場合がある。本研究では、LiNGAMの仮定を緩和した2つの手法の独立性指標に量子カーネルを用いた量子因果探索アルゴリズムを開発し、少数医療データで精度を検証する。 2023年度では、この目的を達成するため、まずはLiNGAMの仮定を緩和した一つの手法の独立性指標に量子カーネルを用い、少数データで精度改善が認められるか否かの検討を試みた。具体的には、LiNGAMを非線形関係へ拡張するadditive noise model に量子カーネルを活用したモデルを開発した。さらに、この手法を実装し、Erdos-Renyiグラフなどのグラフを用い非線形関係を反映させて作成した人工データに適用し、元の対象グラフをどの程度推定できるか評価した。具体的には、Structural Hamming Distanceなどの指標を用い、仮定の強いqLiNGAMと比較し、仮定を緩めたことで精度が改善しているか検証した。検証の結果、非線形関係を導入したデータでは、一部のサンプル数・ノード数においてqLiNGAMよりも開発した手法の方が元のグラフに近い因果構造を推定し、qLiNGAMに比べデータの非線形関係を扱いやすい可能性が示された。さらに、もう一つの手法である、未観測共通原因の影響に頑強なparceLiNGAMに量子カーネルを活用する手法を開発するため、文献やソースコードの精査等、次年度の開発に向けた準備を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
アルゴリズム開発の結果、匿名加工された商用化医療リアルワールドデータの購入を次年度に繰り越したものの、開発予定の2つのアルゴリズムのうち、一つの手法については既に人工データで精度を評価しており、おおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度以降では、まずは未観測共通原因の影響に頑強なparceLiNGAMに量子カーネルを活用する手法を人工データに適用し、少数データで精度改善が可能か検討する。その上で、2つの開発手法の評価に適した、匿名加工された医療リアルワールドデータを獲得し、実データでの評価を行っていく予定である。また、必要に応じて、アルゴリズムの再開発を行う。
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Causes of Carryover |
当初は、はじめに匿名加工された商用化医療リアルワールドデータを購入する方針であったが、アルゴリズムの開発が進むにつれ、まずはアルゴリズムの精度を見定めた上で適切な医療リアルワールドデータを獲得したほうが計画は発展的に進展すると考えられ、初年度では商用化医療リアルワールドデータ購入費を使用しなかったため、次年度使用額が発生した。翌年度分と合わせた使用計画としては、商用化医療リアルワールドデータの購入の費用に加え、研究成果の発表などに使用する予定である。
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