2023 Fiscal Year Research-status Report
集団意思決定における特徴的な意見表明クラスタの解析
Project/Area Number |
23K17005
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
伊藤 真利子 東京大学, 生産技術研究所, 特任助教 (80838847)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 集団意思決定 / Hawkes過程 / 意思表明時系列 / 金融市場 / スパイク列 |
Outline of Annual Research Achievements |
本課題では,集団意思決定において意思表明がされた時刻の系列である意思表明時系列を主な研究対象とする.特に,意思表明時系列において短時間に多くの表明が集中するような表明クラスタに着目し,表明クラスタの特徴と集団意思決定の質の関係を解明することが本課題の目的である. 本年度は,Hawkes過程モデルに基づいて表明クラスタの生成要因を推察する手法を検討した.Hawkes過程モデルは,ある事象がさらに後続する事象を引き起こすような状況を仮定したモデルである.このモデルの主要パラメータであるBranching ratioとBackground rateは,それぞれ,表明がさらに表明を引き起こす追随の強さと表明の起きやすさのベースラインを表す.したがって,Branching ratioとBackground rateの時間的推移と表明クラスタの出現タイミングを比較することで,表明クラスタが追随により内生的に出現したのか,または何かの外部要因によって生じたのかを推察できると考えられる.この分析手法については株式市場における取引時刻データ分析にも適用しており,部分的に本課題への助成を受けて進められた本研究の成果は,国際学術誌に掲載されている. また,集団意思決定実験における意思表明タイミングを調べた先行研究のデータを用いて,意思表明時系列の特徴を分析した.このデータでは,複数の集団意思決定について各個人が意思表明した時刻が記録されており,各集団意思決定からそれぞれ一つの意思表明時系列を構成できる.意思表明時系列間の関係性を,主にスパイク列間に定義されるEdit distanceと呼ばれる距離に基づいて測り,その距離をもとに意思表明時系列をクラスタリングした.その結果,意思表明時系列間のEdit distanceに基づく近さと集団内正答率の類似性には明確な関係性が見受けられなかった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
意思表明時系列における表明クラスタの生成要因を推察する分析手法を確立できたため.また,意思表明時系列のEdit distanceに基づくクラスタリング結果に基づいて,「今後の研究の推進方策」に記載するような今後の方針を立てられたため.
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の分析や研究代表者のこれまでの意思表明時系列に関する研究結果から,意思表明時系列における表明時刻分布そのものではなく,表明クラスタの特徴が集団意思決定の正確さと関係すると予想される.来年度は,表明クラスタの詳細な特徴(表明の集中度合いや,表明クラスタを構成する意見の内容)も考慮して,解析を進める.
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Causes of Carryover |
本研究で分析するデータを慎重に検討した結果,本年度中の購入を見送った.また,より精緻な分析が必要となったため本年度中の論文投稿には至らず,論文掲載費用が必要にならなかった.これらの理由により,次年度使用額が生じた.次年度は,社会経済データを購入し,国際会議での発表や論文の投稿にかかる経費として使用する.
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