2023 Fiscal Year Research-status Report
XANESとシミュレーションによる風化黒雲母の吸着反応の原子スケールからの理解
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23K17034
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Research Institution | Japan Atomic Energy Agency |
Principal Investigator |
山口 瑛子 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, システム計算科学センター, 研究職 (80850990)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 風化黒雲母 / XANES / HERFD-XANES / 第一原理計算 |
Outline of Annual Research Achievements |
地球表層に普遍的に存在する雲母鉱物は、風化によって吸着容量の大きな粘土鉱物となり、様々なイオンを吸着・放出して元素の環境挙動を支配している。吸着容量の大小は粘土鉱物の原子スケールの構造に応じて変化するが、その原子スケール構造が風化によってどう変化するかはわかっていない。そこで本研究では、X線吸収端近傍構造(XANES)測定と第一原理計算を用いて、風化黒雲母の原子スケール構造の解明を目指す。 XANES法は、対象元素の価数やわずかな構造変化による電子状態の違いを捉えることができる強力な手法であるが、理論式が存在しないため得られる情報が限定的である。本研究では、第一原理計算を併用することで、XANESの測定結果から原子スケール構造を推定することを目指す。その際、従来のXANESよりも高いエネルギー分解能を持つ高エネルギー分解能蛍光検出XANES(HERFD-XANES)も利用する。 本研究ではまず、黒雲母試料に化学処理を行い人工的な風化を行った。風化の程度は層間のカリウムイオンの溶出量で評価し、5段階の風化程度を持つ試料を用意した。各試料についてX線回折(XRD)測定を行ったところ、層間距離が系統的に変化していることがわかった。さらにXANESおよびHERFD-XANES測定を行ったところ、スペクトルが系統的に変化し、風化の程度が大きくなるにつれて鉄イオンの酸化が進むことがわかった。一方、第一原理計算では、八面体層中の鉄が全て2価のモデルと3価のモデルを作成し、構造最適化を行った後にXANESのスペクトル計算を行った。その結果、鉄が酸化されるとスペクトルが高エネルギー側にシフトすることがわかり、実験結果と整合した。また、同じ価数であっても、配位した原子の配置がわずかに変化するとXANESスペクトルもわずかに変化する様子が見られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は当初計画どおりに、風化黒雲母試料の作製を完了し、これらの試料にXRD、XANES、HERFD-XANES測定を適用したところ、風化の程度に応じて原子スケール構造が系統的に変化していることがわかった。一方、第一原理計算では、複数のモデルについて、WIEN2kによるXANESスペクトル計算に成功した。これらのことから現在までの進捗状況は、おおむね順調に進展している。と判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
XANESやHERFD-XANESに現れたスペクトル変化が、原子スケール構造のどういった変化によって引き起こされているのかを特定していく予定である。そのために、EXAFS実験の実施や、鉄の局所構造が異なる様々な風化黒雲母モデルを作製し、系統的に第一原理計算を実施していくことを計画している。
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Causes of Carryover |
本年度に利用を計画していた放射光施設のビームラインに改修工事があり、一部の実験が当初計画どおりに実施できなかったため、実験に係る費用の一部が次年度使用額として生じた。次年度使用額は、次年度分研究費と合わせて、次年度に予定している実験に係る費用として使用する。
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