2023 Fiscal Year Research-status Report
深海堆積物中の微生物活動による窒素循環の可視化に挑む
Project/Area Number |
23K17037
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Research Institution | Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology |
Principal Investigator |
小林 香苗 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 超先鋭研究開発部門(超先鋭研究開発プログラム), Young Research Fellow (20908264)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 深海堆積物 / 窒素循環 / 堆積物窒素同位体モデル / 安定同位体比 / 窒素代謝微生物 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、地球化学分析(各種窒素化合物の濃度および安定同位体組成)と、微生物の分子生態解析(群集構造および窒素代謝機能遺伝子)を組み合わせて、海洋表層での一次生産量の異なる複数の海域において、深海堆積物中の無機窒素循環を駆動する微生物群集構造と物質フラックスの関係を評価する。 本年度(2023年度)は、日本海溝の複数地点において海溝底の堆積物を採取した。堆積物の各層の間隙水を採取し、アンモニア、亜硝酸、硝酸の濃度を測定した。また、間隙水中のアンモニアの窒素安定同位体比、亜硝酸と硝酸の窒素および酸素安定同位体比、堆積物中の有機物の窒素安定同位体比の分析を行った。各層の微生物群集構造を把握するためにSSU rRNA遺伝子シーケンス解析を行い、窒素循環に関わる、アンモニア酸化細菌やアンモニア酸化アーキア、亜硝酸酸化細菌、脱窒菌、アナモックス細菌の鉛直分布を把握した。 また、堆積物窒素同位体モデルの構築に取り組んだ。モデルに各微生物反応に伴う同位体組成の変動である同位体分別を組み込んだ。対象の海域の、堆積速度、温度、有機物沈降量、実測した有機物濃度、溶存酸素濃度、栄養塩濃度、窒素・酸素安定同位体比のデータを基に、堆積物窒素同位体モデルを用いてそれぞれの窒素代謝の物質フラックスの計算を進めている。 解析した窒素循環に関わる微生物の鉛直分布と、堆積物窒素同位体モデルによって算出された各窒素代謝の物質フラックスを比較し、対象海域の特徴を把握している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、採取したサンプルに関して地球化学分析と、微生物の分子生態解析を計画通りに実施することができた。分析したデータセットについても、モデルを構築してそれぞれの微生物代謝の物質フラックスの計算を進められてる。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度構築してきた堆積物窒素同位体モデルを用いて、海洋表層での一次生産量の異なる他の海域についても微生物代謝の物質フラックスの計算を進めていく。物質フラックスの計算結果と、堆積物の各層の微生物群集構造や、窒素循環に関連する代謝遺伝子の深度による分布のデータを比較し、議論をしていく予定である。
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Causes of Carryover |
今年度予定されていた調査航海に参加できなかったことと、ショットガンメタゲノム解析の実施を次年度に延期したことによって、旅費と消耗品などの物品費、そして解析費用が発生しなかったために、当初計上していた予算との差額が生じた。次年度使用額については、ショットガンメタゲノム解析費用、得られた成果論文の投稿費用、オープンアクセス費、国際学会参加費とその旅費に充てる計画である。
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