2023 Fiscal Year Research-status Report
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23K17105
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
阿日査 神戸大学, 国際文化学研究科, 協力研究員 (30970628)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 民族問題 / 出身階級 / 内モンゴル / 文化大革命 / 派閥抗争 / 派閥組織 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度に実施した研究の成果として、まず内モンゴル西部の農村地域において、派閥抗争で敗北し、様々な冤罪を着せられ粛清されたモンゴル人たちの親族も連座されていったことにより、被害が拡大していったことを明らかにした。この考察において、被害者の社会的背景の中で「民族」が主な粛清の標的にされる傾向が見られた。次に、内モンゴル中部の牧畜地域における「階級の敵」粛清運動中に、様々な暴力に加え強制移住も発生したことが被害の拡大に大きな影響を与えたことがわかった。この考察では、被害者の社会的背景の「出身階級」が粛清の標的にされるケースも見られた。 文革期間中に強制移住が発生したことは、内モンゴルの文革において人的被害だけではなく、強制移住による経済的な損失も生じていたことを示唆している。この問題はこれまでに議論の対象にならなかったが、同自治区の文革の分析にあたり、当時の社会全盤の状況を分析する上で、極めて重要な課題の一つとして考えられる。 この二つの考察で、本年度の研究計画通りに被害者の「民族」と「出身階級」について統計と分析を行い、被害者の出身階級と人的被害との関連性を分析したが、量的データがやや不足しているため、資料の収集と量的データの統計が必要である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
資料による量的データが不足しているため、さらに資料の収集が必要である。今年度は20冊以上の内モンゴルの地方誌と文革経験者の回想録等を購入したが、文革に関する記事と人的被害に関する数字等の情報が限られているため、さらに同様な資料の収集により、量的データの補足が必要である。特に農村地域における人的被害に関する情報は甚だしく貧弱であるため、内モンゴルの農村と牧畜地域の文革に関連する資料の収集は不可欠である。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き資料の収集と整理を行った上で、内モンゴル全域の文革による人的被害の規模と各行政レベルにおける被害状況について考察する。これまで、内モンゴルの文革による人的被害の規模に関しては、政府の公式見解、中国国内の研究機関や個人による推計と、中国以外の国や地域の研究者たちの見解等様々な説があり、定かではない。自治区全域の被害状況を量的に把握することで、より客観的な結果が得られると考える。
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