2023 Fiscal Year Research-status Report
Indonesia's State Capitalism Amid the Covid crisis: Utilization of State-owned Enterprise and Political Interference in Central Bank
Project/Area Number |
23K17108
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Research Institution | Fukuoka Women's University |
Principal Investigator |
小西 鉄 福岡女子大学, 国際文理学部, 准教授 (60770279)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2028-03-31
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Keywords | インドネシア / 国家資本主義 / コロナ禍 / 国有企業 / 金融政策への政府介入 / 政治経済 |
Outline of Annual Research Achievements |
新興国インドネシアにおいて、政府がコロナ禍の中で国家資本主義をどのように運用したかを探る本研究の中で、初年度である2024年度においては①国家資本主義の理論的な動向とともに、②コロナ禍期のインドネシアの社会・政治・経済の各状況の把握、および③本研究の特徴である金融政策への政府介入の様相を、それぞれ文献調査や新聞雑誌記事、および現地での関係者へのヒアリングにより把握・整理し、そこでの課題を見出した。さらに、④新たに、グローバルに進展するデジタル化の中での国家による経済の主導についても把握した。 ①理論的には、経済危機に直面すると政府は経済を主導しないはずだが、コロナ禍に直面した経済危機においても政府は、国有企業主導のインフラ・プロジェクトをコロナ前の同規模で推進していることが判った。また、先行研究から、マレーシアの国家資本主義においても政府の国有企業の所有形態が多様であることを把握した。 ②インドネシアにおけるコロナ禍の社会衛生的、経済的、政治的な影響を把握し、政府による財政的施策を整理した。 ③中央銀行は、上記の政府支援策のための財源の一部を国債発行によって支えてきたことを捉えた。そこに、金融政策の独立性に対するイシューを見出した。 具体的な実績として、当該年度で実施した調査を基に分析した内容は、『monthly信用金庫』での寄稿論文でコロナ禍期のインドネシアにおける物価管理に関して論じ、またコロナ禍期における金融政策の変化から読み解く国家資本主義の変質について、2025年6月のアジア政経学会で報告する予定である。ほか、本研究に関連する実績として、中央銀行の独立性に関する国際共著論文(英文)2件、デジタル通貨の導入と国家資本主義に関する国際学会(招待あり)での報告2件がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実施計画では2024年度はコロナ禍前後の国有企業政策を中心にアプローチする予定であった。しかし、それより先に、次年度2025年度以降に計画していた金融政策への介入に関する調査を前倒しで実施した。その理由として、①同国では2024年2月に大統領選挙と総選挙を控えており、関係者の異動がありうること、②国有企業政策やインフラ政策に比して、金融政策は相対的に短期で変化しがちであること(特に、インフレの進行や日本での政策変更など、グローバルな金融環境はここ1年だけでも大きく変化している)、という事情がある。 国有企業政策に関する調査・分析は2025年度に実施する予定であり、本年度と次年度での計画を入れ替えた形になっている。 総じて、概ね順調な進展にある。
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Strategy for Future Research Activity |
下記の通り、三本立てで研究を進めていく。 ①国家資本主義に関する理論的枠組みについて、(i)開発主義との相違について、過去の東アジアでの文脈との比較で整理する。(ii)また、インドネシアでの展開を、マレーシアのほか他の新興国での動向と比較して位置づける。(iii)上記(i)(ii)を踏まえて、コロナ禍の前と後という時間軸を含め、インドネシアにおける国家資本主義に関する枠組みを整理し、今後の研究の基盤を整える。 ②2023年度に続いて、金融政策への政府介入に関して、次年度は金融オムニバス法の成立に関する政治経済についての調査と分析を行う予定である。 ③本研究のもう一つの柱である、国有企業政策のコロナ禍での変化の有無、およびその背景についての調査分析を行う。 今後の研究サイクルとして、年2回の現地調査での情報・データ収集、その整理、分析、年1回の学会発表、年1本の論文執筆を実施する。
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Causes of Carryover |
当該年度2024年度における使用状況は、概ね予算通りであった。 残額7000円強は、次年度に繰り越し、文献資料の購入費に充てる計画である。
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