2023 Fiscal Year Research-status Report
帯電気泡崩壊圧縮による革新的ナノ秒パルスX線が拓くがん細胞転移抑制
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23K17318
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
佐藤 岳彦 東北大学, 流体科学研究所, 教授 (10302225)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
劉 思維 東北大学, 流体科学研究所, 助教 (60902228)
宮原 高志 静岡大学, 工学部, 教授 (70239432)
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Project Period (FY) |
2023-06-30 – 2026-03-31
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Keywords | 気泡 / 帯電 / X線 / がん細胞 / 転移抑制 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,(1)帯電キャビテーション気泡を利用し,極微小点源からのナノ秒パルスX線を発生させる機構を解明し手法を確立すること,(2)ナノ秒パルスX線の照射により細胞に損傷を与えることなくがん細胞の転移を抑制する手法の開発と機序を解明することを目的とする.令和5年度は,絶縁油中のキャビテーション気泡の生成と気泡内放電,ならびにキャビテーション気泡径の増大に取り組み,精密な電極位置やレーザ収束位置の位置決め機構を有し,減圧に対応できる容器を作製した.高電圧ならびに減圧に対応できる装置にしたため,今まで困難であったキャビテーション気泡内における放電に成功した.また,帯電量を増大させるための鍵を握るキャビテーション気泡径の増大は,液体を減圧することで最大径を大きくすることに成功した.さらに,細胞照射用ナノ秒パルスX線発生装置の作製に取り組んだ.パルス状に電圧を与えることが可能な電気回路を作製し,X線管に供給することで,低エネルギーX線の発生に成功した.X線発生に当たっては,遮蔽容器の作製や検出器の購入,規定のX線の使用許可を得る工程に時間を要したが,これらについても全て実施し,安全に実験出来る環境を整えた.X線発生方法に関しては特許出願を行った.X線の検証には歯科用X線感光フィルムを用い,十分な強度のX線が発生していることを確認した.同時に,パルス状のX線強度を検出する手法についても検討した.今年度は,X線パルス幅を長めに設定した条件での細胞照射実験の実施や,細胞観察するための顕微鏡を購入するなど細胞実験に向けた環境を整えた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和5年度は,計画していた,ナノ秒パルスX線発生法の確立に向けた,絶縁油中のレーザ収束による単一キャビテーション気泡生成と気泡内放電に成功した.また,気泡を大型化する手法も確立し,帯電量を大幅に増大させることに成功するなど,研究計画を順調に進めている.さらに,X線発生法に関する特許も出願した.ナノ秒パルスX線によるがん細胞転移抑制法の開発に向けて,パルスX線発生装置の作製と規定の許可を取るなど安全にX線を利用できる環境を整え,X線発生の検証ならびに細胞へのX線照射実験ができる状況まで進めた.これらの成果から,研究は順調に進展していると判断した.
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Strategy for Future Research Activity |
令和6年度は,減圧により大型化したレーザ誘起キャビテーション気泡内への放電により帯電量の増大を図る.帯電時ならびに帯電量の違いによるキャビテーション気泡の収縮・崩壊過程を明らかにし,気泡収束過程におけるクーロン反発の影響などを検証する.また,収束時の電位ポテンシャルについても解析を進め,X線発生に向けた電極形状の最適化を行う.X線照射による細胞応答に関する実験も進め,細胞が不活化する線量の閾値の検証や細胞の増殖率の変化などを明らかにする.また,X線パルス検出手法を開発し,キャビテーション気泡や細胞実験用に作製したナノ秒パルスX線の検証を行い,細胞応答実験に展開する準備を整える.これらの手法を開発することで,がん細胞が転移時に特異的に示す間葉系運動の抑制が可能かどうかの検証を行う.
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Causes of Carryover |
令和5年度の交付申請時には,気泡内観察を行うための高輝度連続光光源の購入を予定していたが,X線照射による細胞応答の検証のための蛍光顕微鏡が必要となったため,蛍光顕微鏡の購入を優先した.そのため,高輝度連続光光源の購入を次年度に延長し,令和6年度の予算と令和5年度の残額を合わせて,当該機種を購入することとした.
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