2023 Fiscal Year Research-status Report
Practical Research on Fragility Updating by Hybrid Monitoring System
Project/Area Number |
23K17331
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
高橋 典之 東北大学, 工学研究科, 准教授 (60401270)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
榎田 竜太 東北大学, 災害科学国際研究所, 准教授 (20788624)
郭 佳 京都大学, 農学研究科, 准教授 (50868081)
五十子 幸樹 東北大学, 災害科学国際研究所, 教授 (20521983)
梶原 浩一 国立研究開発法人防災科学技術研究所, 地震減災実験研究部門, 契約研究員 (10450256)
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Project Period (FY) |
2023-06-30 – 2026-03-31
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Keywords | 画像モニタリング / AI Detection / 修復費用 / 確率論的評価 / 確定的評価 |
Outline of Annual Research Achievements |
物理量センシングによるモニタリングと,監視カメラ等による画像モニタリングとの,ハイブリッド・モニタリングにより,フラジリティ曲線の自動(即時)ベイズ更新システムの開発を目的とした研究である。 壁紙が貼り付けられた石膏ボードの損傷のうち,特に軽微なDS1(しわ)損傷の深層学習によるディテクション精度の向上を図り,手持ちのデータでの分類精度が100%になることを確認した。また,画像モニタリングに関連した損傷画像評価技術について,SfMを用いた写真測量技術のフィージビリティスタディ,AI DetectionだけでなくSemantic Segmentationを展開した場合の計算コストの評価についても検討を行った。また,2024年1月1日(令和6年1月1日)に発生した能登半島地震の被害調査に赴き,非構造部材の地震損傷画像データの収集・増強をはかることが出来た。 上記と並行して,ハイブリッド・モニタリングによるフラジリティ曲線の自動(即時)ベイズ更新が,実社会においてどのように活用されうるかのシナリオおよびその効果・影響評価についても事前分析を行った。フラジリティ曲線を更新せず初期値のまま+中地震による損傷の有無も画像モニタリング等で確認しない場合と,フラジリティ曲線を更新+中地震による損傷の有無を画像モニタリング等で確認する場合とで,修復費用推計値を比較すると,供用期間を通じて最大3割ほどの費用差が生じることを確認した。すなわち,現在地震保険などの評価において用いられているフラジリティ曲線を用いた修復評価(完全な確率論的評価)と,実際の損傷の有無を踏まえた修復評価(モニタリングによる事象の確定的評価)とでは,修復費用に無視できない差が生じることが明らかとなった。また,フラジリティ曲線の発展的活用方法として,ダウンタイム評価への展開についてもその可能性について検討を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該研究が採択された7月までの準備研究において,壁紙が貼り付けられた石膏ボードの損傷のうち,特に軽微なDS1(しわ)損傷の深層学習によるディテクション精度の向上を図ることができたが,多種多様な非構造部材の製品(品番)ごとに学習データを準備することは非現実的であると考え,まずは,ハイブリッド・モニタリングによるフラジリティ曲線の自動(即時)ベイズ更新が実社会においてどのように活用されうるかのシナリオ評価について分析を行った。フラジリティ曲線を用いた完全確率論的修復費用評価と,実際の損傷の有無を踏まえたモニタリングによる事象の確定的修復費用評価とでは,修復費用に3割程度の差が生じることを確認するとともに,特にDS1レベルの損傷評価が修復費用に与える影響が大きいことを確認した。これを踏まえて,DS1レベルの損傷を中心に(製品品番ごとの背景・模様・色味が多少異なっていても)AI Detectionできるように学習データ構築を図ることが効果的であると分かった。また,これまでは主に振動台実験で得られた損傷画像を中心に学習データの構築を進めてきたが,2024年1月1日に発生した能登半島地震の被害調査に赴き,実建物における非構造部材の地震損傷画像データの収集・増強を図ることが出来た。DS1,DS2,DS3といった地震損傷のレベル判定だけでなく,劣化・汚損など地震損傷以外の変状をどのように分別すべきかの重要性が明らかとなり,今後の研究進捗において「損傷レベル」のほか「汚損種別」についても評価することの必要性を確認できた。 また上記に加えて,画像モニタリング技術およびフラジリティ曲線の発展的活用手法の検討(SfM,Semantic Segmentationの適用と計算コスト評価,および,ダウンタイム評価への展開検討)という発展的課題にまで研究領域を広げることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度までの研究により,DS1レベルの損傷を中心にAI Detectionできるように学習データ構築を図ることが修復費用評価において効果的であることが明らかとなり,また,2024年1月1日に発生した能登半島地震の被害調査結果における実建物の非構造部材地震損傷画像データの収集・増強を通して「地震損傷レベル」判定だけでなく,劣化・汚損など「汚損種別」についても判定できるようにすることの必要性が明らかとなった。これらを踏まえ,今年度は,当初研究計画で予定していた「開口部付き非構造部材敷設架構振動台実験」の実施にむけて,試験体計画を一部修正し,開口4隅の特性を変化させることで表裏で8種の損傷状態が取得できるような試験体計画と,特にDS1レベルの損傷を想定した中地震を中心とする加振計画を策定するとともに,実験後に試験片を切り取り,劣化・汚損を模擬した非地震損傷変状を追加的に付与することで,学習データとして「地震損傷レベル」判定だけでなく「汚損種別」も評価できる研究計画にすることで,より実践的なハイブリッド・モニタリング技術になるようにし,これにより期間全体を通した研究の進捗をさらに図るようにした。
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Causes of Carryover |
購入予定だったモーションキャプチャシステムについて,実使用感および実運用した場合の不具合等についての事前評価を目的として,別途実施した実験で試用機の適用機会を得ることができたので,実使用感および実試用した場合の不具合についての検証を行った。 グルーガンにより試験体にマーカーを設置する方法が既定となっているが,ひび割れや亀裂などの損傷が進展すると,グルーガンの塑性変形追従能力の限界によりマーカーポイントが脱落するなどの(損傷評価を目的とした場合に特に気になる)問題が生じ得ることが確認された。 これを受け,グルーガンでの固定以外に塑性変形追従能力の高い強力両面テープなどの手法を用いてマーカーポイントを固定すれば問題が解消されそうなことなど,計測機器導入にあたり予想外の課題を解決する目途が立つまでに時間がかかり,備品導入が遅れたことが次年度使用額の生じた理由となる。 今年度の使用計画としては,上述した通り既に課題を解決する目途が立っているので,次年度使用額分を使って前年度購入予定品の購入にあてる計画としている。
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Research Products
(5 results)