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2023 Fiscal Year Research-status Report

細胞内のクロマチンにおける多様な転写機構の構造基盤

Research Project

Project/Area Number 23K17392
Research InstitutionThe University of Tokyo

Principal Investigator

鯨井 智也  東京大学, 定量生命科学研究所, 助教 (70823566)

Project Period (FY) 2023-06-30 – 2026-03-31
KeywordsRNAポリメラーゼII / クロマチン / ヌクレオソーム / クライオ電子顕微鏡 / 転写 / 遺伝子発現制御
Outline of Annual Research Achievements

生物は、ゲノムDNAを設計図として保持している。真核生物の遺伝子発現では、RNAポリメラーゼII(RNAPII)が、クロマチン構造として折り畳まれたゲノムDNA中の遺伝子情報を、メッセンジャーRNAに転写する。本研究では、細胞内のクロマチンにおけるRNAPIIの転写機構を、多様な転写複合体を立体構造として可視化して解明することを目的とする。
細胞内では、RNAポリメラーゼIIは多様な因子と結合し、機能的な複合体を形成してクロマチンを転写する。クロマチンは、ヒストンタンパク質にDNAが巻き付いたヌクレオソームと呼ばれる構造体が連なった数珠状の構造である。転写の際には、転写活性を向上する転写伸長因子などが結合する。また、ヌクレオソームには、ヒストンシャペロンやリモデリング因子などが結合し、ヌクレオソーム構造が変換されることで効率的にヌクレオソームDNAが転写される。このような多様な因子による制御こそがクロマチン転写の実態である。この実態を明らかにするため、本年度は、ヒトの細胞内でクロマチンを転写中のRNAポリメラーゼII複合体を、構造が保たれたまま緩やかに抽出し、クライオ電子顕微鏡を用いて立体構造解析を行うための実験系の確立を行った。本研究は、細胞内のクロマチン構造において転写中のRNAポリメラーゼIIをはじめて可視化するものであり、クロマチンにおける遺伝子制御の理解へ貢献するものと期待される。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

1: Research has progressed more than it was originally planned.

Reason

多様な転写複合体を立体構造として可視化するため、本年度は、クロマチン転写中のRNAポリメラーゼIIを細胞内から抽出し、その立体構造をクライオ電子顕微鏡を用いて決定する実験系の確立を行った。まず、RNAポリメラーゼIIのサブユニットにタンパク精製に用いるタグを融合したHeLa細胞を大量培養した。細胞の大量培養のために、本研究費を用いてインキュベーターを2台導入し、培養を効率を高めた。培養後、細胞から抗体ビーズを用いて、RNAポリメラーゼII複合体を調製した。その後、複合体を安定化しつつ均一な粒子を取得するため、架橋剤とスクロースを用いた密度勾配円分離(GraFix)により、精製した。調製した試料をVitrobotを用いて急速凍結し、クライオ電子顕微鏡により観察した。そして、この試料について顕微鏡写真を大量収集し、単粒子解析を行った。データ解析において、本研究費より高性能なGPUサーバーを2台導入することで、解析の速度を高めた。その結果、RNAポリメラーゼII複合体や、クロマチンとの複合体を形成したRNAポリメラーゼII複合体の立体構造を決定し、原子モデルを構築することに成功した。

Strategy for Future Research Activity

今後は、さらに多様なRNAポリメラーゼIIの複合体を明らかにする。RNAポリメラーゼIIのC末端領域には、7アミノ酸の配列が52回リピートされるテール領域が存在する。このテールは、転写の各段階で様々な翻訳後修飾が導入されることが知られており、その修飾の種類に応じて多様な転写制御因子が結合する。このテールにおいて、2番目および5番目のセリンがリン酸化されると、これらのリン酸化を得意的に認識する転写伸長因子が結合し、RNAポリメラーゼII伸長複合体が形成される。そこで、これらの複合体の実態解明のため、RNAポリメラーゼIIの翻訳後修飾特異的に細胞内から抽出する実験系を確立する。そして、クロマチンを転写中のRNAポリメラーゼII複合体をヒト細胞から抽出し、クライオ電子顕微鏡解析を行う。

Causes of Carryover

当初は、国際学会の参加のため、海外旅費を計上していたが、予定の変更があり、オンラインでの発表となった。そのため、飛行機代および宿泊費を支出する必要がなくなったため研究費の支出の削減へとつながった。
本経費は、次年度に細胞培養関連、RNAポリメラーゼII精製、クライオ電子顕微鏡関連の消耗品、機器の購入に用い、さらなる研究の効率化、速度の向上を図ることを予定している。

  • Research Products

    (4 results)

All 2023

All Presentation (3 results) (of which Int'l Joint Research: 1 results,  Invited: 2 results) Book (1 results)

  • [Presentation] Cryo-EM structure of the DEK-nucleosome complex and its implications on gene regulation2023

    • Author(s)
      Kujirai T, Echigoya K, Kishi Y, Takizawa Y, Saeki M, Ito T, Negishi L, Masumoto H, Kimura H, Gotoh Y, Kurumizaka H
    • Organizer
      , Cold Spring Harbor Laboratory meeting, Mechanisms of Eukaryotic Transcription
    • Int'l Joint Research
  • [Presentation] 転写伸長におけるヌクレオソーム構造のダイナミクス2023

    • Author(s)
      鯨井智也
    • Organizer
      筑波大学開学50周年記念TARAシンポジウム
    • Invited
  • [Presentation] 転写におけるヌクレオソームの崩壊と再構築の構造解析2023

    • Author(s)
      鯨井智也、江原晴彦、白水美香子、関根俊一、胡桃坂仁志
    • Organizer
      第16回日本エピジェネティクス研究会年会 2023年6月
    • Invited
  • [Book] 生体の科学 転写伸長因子およびヒストンシャペロンFACTによるヌクレオソーム転写制御機構2023

    • Author(s)
      畠澤 卓, 鯨井 智也, 胡桃坂 仁志
    • Total Pages
      6
    • Publisher
      金原一郎記念医学医療振興財団

URL: 

Published: 2024-12-25  

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