2023 Fiscal Year Research-status Report
Elucidation of biological function of polyamine metabolism in the cancer microenvironment
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23K17420
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Research Institution | Japanese Foundation for Cancer Research |
Principal Investigator |
高橋 暁子 公益財団法人がん研究会, がん研究所 細胞老化研究部, 部長 (60380052)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
周 翔宇 公益財団法人がん研究会, がん研究所 細胞老化研究部, 博士研究員 (10879935)
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Project Period (FY) |
2023-06-30 – 2027-03-31
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Keywords | 細胞老化 / がん / ポリアミン |
Outline of Annual Research Achievements |
細胞老化は、DNA損傷等の発がんを誘発するストレスにより細胞周期が不可逆的に停止し重要ながん抑制機構として働く一方で、細胞老化を起こした細胞(老化細胞)は加齢に伴い蓄積し、炎症性蛋白質や細胞外小胞を盛んに分泌することで、がんを含む加齢性疾患の発症を促進することが明らかになっている。近年、老化細胞を選択的に除去することで、がんを含む加齢性疾患の発症が抑制され、健康寿命が延伸することが報告されたことから、老化細胞はがんなどの加齢性疾患の予防や治療における新たな標的として注目を集めている。我々は老化細胞選択的に細胞死を誘導するための新規標的の同定を目的として、老化細胞特異的な生存維持遺伝子を網羅的に探索し、その結果ポリアミン代謝酵素をコードする遺伝子を同定した。この遺伝子は、複数のがん種で高発現し、薬剤耐性の獲得や患者の予後不良に関わることが報告されている。また、ポリアミン代謝は個体老化に関与することが長らく示唆されてきたが、加齢性疾患における本質的な役割については不明な点が多い。細胞老化に伴い細胞内ポリアミン量が減少することから、当該年度はそのメカニズムを解析した。その結果、複数の細胞種において、細胞老化の誘導過程でポリアミン生合成系酵素の発現量が低下するとともに、ポリアミン分解系酵素の発現量が上昇することが確認された。また、これらの酵素の発現を制御することが知られる分子の発現量も同時に変化していることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度の研究によって、細胞老化に伴いポリアミン量が減少するメカニズムの解析が進んだことで、老化細胞内のポリアミン量を変化させるための効果的な方策が検討できるようになった。これにより、老化細胞内のポリアミン量を変化させた際にどのような細胞応答が起きるかを解析し、老化細胞の生存維持におけるポリアミン代謝およびポリアミン量の重要性を検証する段階へと移行することができた。したがって、当該年度において本研究はおおむね順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
ポリアミンの主要な機能の一つとして翻訳の制御が知られている。老化細胞においては、全体的な翻訳が抑制されていることが報告されており、細胞老化に伴うポリアミン代謝の変化が翻訳の抑制を介して老化細胞の生存維持に寄与する可能性が考えられる。これについて検証するために、今後はポリアミン代謝酵素の発現抑制や過剰発現、および培地へのポリアミンの処置によって老化細胞内のポリアミン量を変化させた際に、老化細胞において翻訳の変化および細胞死が見られるかどうか検討する。また、様々な細胞死阻害剤のライブラリを用いた実験により、我々が同定したポリアミン代謝酵素を発現抑制することによる老化細胞の細胞死経路を特定し、上述の検討による知見と合わせて、老化細胞におけるポリアミン代謝変化と生存の関係を明らかにする。 また、生体における老化細胞の除去への応用可能性を検討するために、我々が飼育している細胞老化イメージングマウスにポリアミンあるいはポリアミン代謝経路を標的とする化合物の投与等を行い、加齢に伴い蓄積した老化細胞が減少するかどうかを経時的に解析する。
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Causes of Carryover |
本年度は微量高速遠心機を購入予定であったが、設置場所の問題で購入を再検討することになった。また、培養細胞を用いた解析を重点的に行ったため動物実験の費用がかからなかったことと、人件費・謝金として計上していた費用で適任者の雇用がなかったため、これらの費用を来年度に使用することとした。さらに、本研究成果を国際学会で発表するために海外旅費を計上していたが、招待講演で海外で発表できたことと、コロナ対策による研究所の渡航制限により旅費の使用がなくなった。そのため、海外旅費を来年度に繰り越して細胞老化の国際学会で発表するための旅費として使用を計画している。
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