2023 Fiscal Year Research-status Report
Development of next generation ISFET pH sensor to identify upwelling area of deep ocean circulation
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23K17464
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
茅根 創 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 教授 (60192548)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中嶋 秀 東京都立大学, 都市環境科学研究科, 准教授 (10432858)
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Project Period (FY) |
2023-06-30 – 2026-03-31
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Keywords | 海洋pH / 湧昇域 / 深層海洋循環 / 次世代半導体pHセンサー |
Outline of Annual Research Achievements |
深層海洋循環は、全球規模の熱輸送を通じて長期の気候変動を支配し、炭素や栄養塩の循環を駆動している。その北部北大西洋や南極海での海水の沈み込みの理解は進んでいるが、北太平洋における湧昇域は不明な部分が多い。中深層水のpHは7.3-7.7と低く、局所的な沿岸湧昇による表層海水のpH低下も確認されている。pHを、水温・塩分とは独立の化学パラメータとして、水深6000mまで繰り返し取得することができれば、 湧昇域を特定することができる。 しかし、現行のガラス電極やISFET電極は、参照電極として銀―塩化銀/塩化カリウムを用いているため、高圧での計測は困難だった。本研究の目的は、我々が開発した、半導体を隔離し、内部液をもたない次世代半導体 ISFET pH センサーによって、高圧の深海のpHを高精度で計測して、湧昇域を特定することである。 次世代センサーの製作について、まず5mm角のシリコンウェハー上に、スパッタ装置を用いて酸化タンタル薄膜を成膜し,ISFETセンサーの感応膜を作製した。次に、カーボンファイバーテープまたはカーボンペーストによってISFET センサーのゲート電位検出部を作製した。感応膜とゲート電位検出部を一体化し、これらを半導体から切り離すことによって、微小で耐圧性が高く、安価でセンサーチップの交換を容易に行える次世代半導体 ISFET pHセンサーを作成した。 こうして開発したISFETセンサーの温度特性、応答速度、pH分解能、繰り返し再現性等の性能を、5つの異なるpH標準液で繰り返し計測することによって評価した。またこの次世代センサーを、4000mの高圧で計測するための圧力容器を作成し、フロートに標準的に搭載するために企業との協力も得られ、開発をはじめている。また小笠原近海の湧昇域ホットスポットを,海洋物理データにより特定して、令和6年度の現地計測を準備した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画通り、次世代センサーを製作し、実験室と海洋においてその性能を評価することができた。さらに、その原理的な革新性について評価し、海洋計測機器やいくつかの企業との製品化の道を開くことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
次世代センサーの製作について、標準的な製作方法を検討して、安定したセンサーの製作、評価方法を確立して、現場計測のためのセンサーを提供する。昨年度末に耐圧容器の製作とその試験が終わり、またターゲットとなる海域が特定できたことから、本年度早々に耐圧センサーを作成して海水試験を行って、適当な調査航海に同乗して計測をはじめる。
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Causes of Carryover |
2023年度はISFETセンサーの材料を購入する研究費が不足したため,15,042 円の残額が生じた。 次年度はこの残額を繰り越して次年度の研究費と合算することにより,ISFETセンサーの材料を新たに購入する。 この材料を用いてセンサーを新たに作製し,センサーの性能向上を図る予定である。
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