2023 Fiscal Year Research-status Report
Developing and validating a training program to improve domain-specific working memory efficiency in second language.
Project/Area Number |
23K17499
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
村尾 玲美 名古屋大学, 人文学研究科, 准教授 (80454122)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石田 知美 日本福祉大学, 全学教育センター, 准教授 (30747449)
中西 弘 西南学院大学, 外国語学部, 教授 (10582918)
梶浦 眞由美 名古屋市立大学, 大学院人間文化研究科, 准教授 (70849025)
大塚 賢一 名古屋短期大学, 英語コミュニケーション学科, 教授 (70446235)
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Project Period (FY) |
2023-06-30 – 2026-03-31
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Keywords | ワーキングメモリ / 長期記憶 / トレーニング法 / 文再生課題 / 口頭リハーサル |
Outline of Annual Research Achievements |
近年のワーキングメモリ(WM)モデルでは、長期記憶に保持されている言語知識の助けにより情報をチャンク化することで、短期的に保持できる情報量が増えることが示されている。また、WMに繰り返し保持された情報は長期記憶を形成することもモデル化されている。 本研究は、WMと長期記憶の相互作用に着目し、短期的に保持される情報量を徐々に増やしていくようなトレーニングを行うことで言語能力を促進させることができるかを検証することを第一の目的としている。第二の目的として、長期記憶による情報のチャンク化を反映するようなWM効率の測定法の妥当性と信頼性を検証する。 プロジェクト1年目は二つ目の研究課題に取り組んだ。WM測定法として採用したのは文再生課題であるが、複数の実施方法と採点方法を比較した。実施方法としては口頭再生と筆記再生、採点方法としては再生総語数と連続再生語数を比較した。提示方法(音声提示か文字提示か)までは本研究では検証しきれなかった。課題内の比較に加えて、課題間の比較としてリスニングスパンタスク、文認識課題、デジットスパンタスクも行った。実験参加者は日本の大学に通う大学生39名であり、上記に述べた四つのWM課題に加えて、英語リスニング能力を測定するためのTOEIC形式のリスニングテストを実施した。再テスト信頼性を計算するため、WM課題については1か月以上2カ月以内の間隔を空けて同じ課題を2回実施した。 リスニング能力を従属変数とした一般化線形混合モデルの結果、文再生課題(筆記再生)の再生総語数が他の課題に比べて最もよくリスニング能力を説明することが明らかとなった。再テスト信頼性も.93と最も高く、ラッシュモデルによる受験者信頼性も.97、項目信頼性も.91と最も高かった。受験者の能力値を区分する指数は5.44、項目難易度を区分する指数に関しては連続再生語数で3.48と高い値が観測された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本プロジェクトは三つの実験から成り立つ。第一と第二の実験はワーキングメモリ効率を向上させるためのトレーニングプログラムの計画と実施であり、プロジェクト2年目と3年目に実施する。プロジェクト1年目である2023年度は、申請書に明記した通り、ワーキングメモリ(WM)効率を測定するSentence Recall Task(文再生課題)の信頼性と妥当性を検証した。研究代表者と研究協力者とで被験者を募り、既存のWM測定法であるDigit Span TaskとListening Span TaskとSentence Recognition Task、および本研究で開発したSentence Recall Taskの口頭再生と筆記再生を実施し、ラッシュモデルを用いて被験者と項目の信頼性を分析した。一部の被験者には再テストを行い、再テスト信頼性も計測した。また、基準関連妥当性の評価としてTOEIC形式のリスニングテストを実施し、各課題との相関を求め、線形混合効果モデルによりどの課題が最もよくリスニング力を説明する指標であるかも分析した。一部検証しきれなかった課題も残ったが、当初計画していた比較実験は全て遂行することができた。研究成果はすでに論文化しており、これから国際誌に投稿する予定である。学会での発表は未実施であるため、2024年度国際学会での発表を計画している。
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Strategy for Future Research Activity |
プロジェクト2年目となる2024年度にはワーキングメモリ(WM)効率を向上させるトレーニングプログラムとして「口頭リハーサル訓練」(Vocal Rehearsal Training)を2種類開発する。口頭リハーサル訓練とは、英語音声を口頭で繰り返す練習であるが、繰り返す長さを徐々に増やしていく方法である。教育介入者による影響が出ないようにするため、学習者自らがコンピュータ上で学習できるようPsycoPyを用いてプログラムを作成する。 本研究では口頭リハーサルを行う英文教材を2種類準備し、どちらの教材で学習する方がWM効率の向上、長期的言語記憶の形成、および言語能力の向上に貢献するかを比較する。一つ目の英文教材は、動詞が導く英語の構文(動詞下位範疇化情報)に焦点を当てた教材である。研究代表者が取り組んできた基盤研究(B)で作成した英文を元に、文の長さを調節して教材を作成する。作成した文は自動音声により音声化し、プログラムに組み込む。二つ目の教材は、教育現場で使用されるような選択の自由のあるリーディング教材を使用する。一つ目の教材とは異なり、文と文の間に意味的なつながりのある教材である。著作権上の問題を解決したのち、リーディング教材を自動音声により音声化し、トレーニングプログラムに組み込む。 口頭リハーサル訓練の事前と事後に3種類のテストを行うが、そのうちWM効率の向上を測るテストは開発が進んでいる。言語能力を測るテストは、TOEIC形式のリスニングテストおよびTOEFL形式のスピーキングテストを行う。長期的言語知識の定着を測るテストについては、口頭リハーサル訓練で使用した2種類の教材を元に2024年度に作成する。 プロジェクト3年目となる2025年度の前半には実験参加者を募集して、口頭リハーサル訓練と事前事後テストを実施する。後半にデータ分析を行い、プログラムの訓練効果を検証する。
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Causes of Carryover |
2023年度は実験1を実施するため、実験参加者への謝礼とデータ整備を依頼するパートタイム職員の雇用費としての予算を計上していた。実験開始時期が早まり、実験期間が5月から8月にかけてとなったため、実験参加者への謝金は大学の個人研究費を使用した。また、データ整理を急いで行う必要があったため、パートタイム職員を雇用せず研究代表者と分担者とが自ら実施した。今年度中に実験1の結果を国際学会で発表し、研究協力者分の費用を支出する予定であったが、今年度中の発表申請が間に合わなかったため、翌年度に繰り越すこととした。 次年度繰越額は、翌年度分請求額と合わせ、研究代表者が研究により多くのエフォートを割けるようにするため、一部をバイアウト経費として使用する。また、申請当時には計上していなかった項目として、実験1と実験2をオンラインで実施するためのPavlovia(オンライン実験ツール)の使用料として使用する。
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