2023 Fiscal Year Research-status Report
初期人類の高精度3次元脳形態復元から探るヒトの脳機能への選択圧
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23K17513
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
荻原 直道 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 教授 (70324605)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田邊 宏樹 名古屋大学, 情報学研究科, 教授 (20414021)
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Project Period (FY) |
2023-06-30 – 2026-03-31
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Keywords | エンドキャスト / 初期ホモ属 / 猿人 / 計算解剖学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、3次元モデリングと脳イメージング研究の技術・手法に基づいて、猿人と初期ホモ属の化石頭蓋骨の内腔形状(エンドキャスト)およびそこに収まっていた脳形態を数理的に詳細に推定し、機能的特異性を有する脳の各領野の大きさの比較から両者の脳機能の差を明らかにすることを通して、初期ホモ属の脳にどのような選択圧が作用したのかを読み解くことを目的としている。 本年はヒト、チンパンジー、ニホンザルの3次元脳MRI画像に基づいて、脳の各領域の形態的相同性を保持したまま脳形態を相互変換する方法論を開発した。3種各10個体の頭部MRI画像と、解剖学的・細胞構築学的に作成されたそれぞれの脳地図を用いて、脳を前頭葉や頭頂葉など計39の領域に分割した。次に、各相同領域の輝度値差の総和を最小化するように全個体の脳を非線形変換(DARTEL法)することで3種の平均脳(基準脳)、および各個体の脳を脳回・脳溝や各領域内の灰白質・白質構造の細部までボクセル単位で基準脳に一致させる変形関数を算出した。これにより3種間の脳の相同変換を数理的に実現することを可能とし、化石頭蓋骨のエンドキャストから脳形態を数理的に詳細に推定することを実現する道筋を付けた。 また、本相同変換を用いて、3種の脳形態の違いを可視化・定量化した結果、ヒトはチンパンジーと比べて、前頭葉の前頭極、背側前頭前野、下前頭回後部、側頭葉の中側頭回、下側頭回後部、頭頂葉の角回、楔前部などが相対的に拡大していることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
脳の相同変換を数理的に実現し、化石頭蓋骨のエンドキャストから脳形態を数理的に詳細に推定することを可能とする道筋を付けたから。
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Strategy for Future Research Activity |
構築した脳形態の相同変換手法を活用して、猿人2個体、初期ホモ属5個体についてその頭蓋内腔形状(エンドキャスト)からそこに収まる脳を復元すること試みる。まず、化石頭蓋骨のCTデータよりその3次元形状を仮想空間内に再構築し、その内腔の欠損部分を数理的に補完することで、各化石の完全なエンドキャストを復元する。次に、上述の現生3種の脳の形態変異に基づいて、初期人類の脳形態が取りうる形態空間の範囲(発生的制約により規定される範囲)を推定し、その部分空間の中に各エンドキャストを位置づけることで初期人類の脳形態を数理的に推定する。復元結果に基づいて、猿人から初期ホモ属への移行期において、脳の各領域の容量がどのように変化するのかを分析する。
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Causes of Carryover |
今年度海外研究者を招聘して、本研究課題について議論する予定であったが、日程の都合がつかず延期になったため持ち越しが生じた。しかし研究の推進のため本年これを実現させる予定である。
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Research Products
(2 results)