2023 Fiscal Year Research-status Report
日本のリアス海岸はどのように維持されてきたのか?縄文海進後の海岸線変化過程の解明
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23K17527
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Research Institution | Tokyo Gakugei University |
Principal Investigator |
青木 久 東京学芸大学, 教育学部, 教授 (30423742)
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Project Period (FY) |
2023-06-30 – 2026-03-31
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Keywords | リアス海岸 / 岩石強度 / 波食 / 断層 / 岩石制約 / 溺れ谷 / 縄文海進 / 海岸線 |
Outline of Annual Research Achievements |
リアス海岸は,河谷の発達した山地・丘陵が沈水して形成される地形である.日本にみられるリアス海岸は,縄文海進に伴う海面上昇によって形成されたと考えられており,縄文海進最盛期には,日本の多くでリアス海岸が出現したと思われる.本研究の目的は,海岸線の形状に着目し,リアス海岸が現在まで維持されてきた条件を解明することである. 本年度は,まず国土地理院において日本の典型地形「リアス式海岸(溺れ谷)」として指定されている海岸の分布を調べた.現在,日本にみられるリアス海岸は不連続に分布し,硬岩の海岸で発達している傾向がみられた.海岸線の形状の指標として屈曲度と湾入度を定義し,図上計測を行ったところ,海岸線の形状は海岸によって大きく異なることがわかった.次に,リアス海岸に指定されている油壷湾・諸磯湾を含む三浦半島南部の海岸を対象として,地質が均質な区間を調査サイトとして設定し,海岸線の形状と岬の岩石強度との関係を調べた.調査対象地域の地質は,宮田層,初声層,三崎層と呼ばれる堆積岩からなるが,シュミットロックハンマー反発値は,宮田層が26.2,初声層が29.7-39.7,三崎層が42.7-52.7であり,岩石強度の場所的差異がみられた.さらに岩石強度と海岸線の形状との関係を分析したところ,岩石強度の大きいサイトほど,海岸線の屈曲度が大きくなる傾向がみられた.この結果は,岬の波による侵食されにくさがリアス海岸の維持・発達に関係することを示唆するものと考えられる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
図上計測および野外調査について,ほぼ計画通りにデータを収集できた.そのため,「順調に進んでいる」と判断した.
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Strategy for Future Research Activity |
リアス海岸における継続的な調査(図上地形計測と野外計測)を進め,リアス海岸の地形的特徴を把握する.なお,現在見られる海岸線は人工改変の影響を受けている場合があるため,旧版地形図を利用した把握・分析を同時に進めていく.
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Causes of Carryover |
本年度に計画していた野外調査が一部完了しなかったことと,購入予定の物品を購入できなかったため.この調査は次年度に行う予定とし,その分の調査旅費・人件費・物品費として充てる.
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