2023 Fiscal Year Research-status Report
現代的「職人」の組織化理論構築:杜氏制度をめぐる新たな組織化の探索的事例研究
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23K17554
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
後藤 将史 神戸大学, 経済経営研究所, 准教授 (20868278)
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Project Period (FY) |
2023-06-30 – 2026-03-31
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Keywords | 杜氏 / 日本酒産業 |
Outline of Annual Research Achievements |
2023年度は、研究の出発点として基礎的な情報データベースの構築と、杜氏組合に対する聞き取り調査を開始した。具体的には、研究内容の各項目につきそれぞれで次の成果を挙げた。 1.文献調査 文献として、酒造産業関係、杜氏関係の公刊された書籍および論文を収集し、整理した。特に、下記二点について重点的な整理を行った。第一に、杜氏組合の実態について、各杜氏組合および日杜連からデータを収集し、それらの規模・実態について公刊資料やデータの意味を含めて、理解を整理した。第二に、杜氏の実態について、各種公開資料から各酒造所の杜氏データベースを構築し、どのような杜氏がどの程度、どこにいるのか、その属性や分布について整理した。 2.聞き取り調査(インタビュー) 杜氏組合(日杜連含む)に対して、秋~冬期に15件の聞き取り調査(録音インタビュー)を実施した。これらを通じ、公開資料より深いレベルでの運営の実情について情報を収集し、リサーチクエスチョンの精緻化を行った。具体的には、西洋ギルド組織の系譜をくむクラフト組合としての杜氏組合の多様性、制度としての杜氏制度の変化による制度維持、機械化の包摂による伝統技能の発展的維持など、複数の理論的テーマが導出された。さらに、文献・インタビュー分析を通じた基礎理解から、事例としての文脈を整理したディスカッションペーパー1本を公刊した。これらを通じ、今後の本格的探索に対して必要な情報基盤の構築を行うことができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は萌芽的研究のため、まず関連文献を収集し新たな視点で理解する段階から出発するなど、最初に基礎的な作業に時間を使う必要がある。当該年度は、文献収集・整理・インタビュー開始と、必要なステップを踏んでほぼ計画通りに推進している。
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Strategy for Future Research Activity |
2024年度は、聞き取り調査(インタビュー)を継続していく予定である。具体的には、まだ聞き取りが終わっていない杜氏組合、杜氏組合の組合員(酒造企業の杜氏)、新技術に関する機器メーカーを対象とする。同時に、研究成果としてデータを整理し論文化する準備を進める。なお、2024年1月に地震被害にあった地域(能登地方・能登杜氏)については、研究上重要な地域であるが、当面酒造自体も難しい現地の事情を勘案し、状況次第でこの地域の新たなデータには依存しない事例研究とするよう、研究設計の微修正を行う。
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Causes of Carryover |
情報収集のため予定していた国際学会参加について、他研究費での研究に関する発表予定が採択され当該研究目的による参加となったため、当該予算で支出を行うこととなり、支出予定が変更となった。 さらに、1月に発生した震災により、能登地方(能登杜氏)に関するフィールドワークが不可能となったため、当該出張および関連研究支出の予定が変更となった。 2024年度については、学会参加を増やす予定であり、また能登地方については状況を見て必要に応じ他地域で代替しつつ、国内フィールドワークを行う予定である。
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