2023 Fiscal Year Research-status Report
オンライン型インタビュー調査を,質的研究の手段に根拠づける半構造化面接法の開発
Project/Area Number |
23K17572
|
Research Institution | Osaka Metropolitan University |
Principal Investigator |
大西 次郎 大阪公立大学, 大学院生活科学研究科, 教授 (20388797)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岡田 進一 大阪公立大学, 大学院生活科学研究科, 教授 (20291601)
|
Project Period (FY) |
2023-06-30 – 2026-03-31
|
Keywords | 質的研究 / 質的調査 / 研究方法 / オンライン / 対面 / 半構造化面接 / インタビュー |
Outline of Annual Research Achievements |
オンライン型ビデオ会議システムの評価を研究「目的」として対面型コミュニケーションと比較する多くの試みの一方, 社会福祉学領域における質的調査では研究「方法」としてのオンラインの評価を手薄にしたまま, コロナ禍以降, その活用を常態化させつつある. そこで2023年度は, 対面型との比較を念頭に置いたオンライン型の調査結果の分析を行った. その結果, 以下を導いた. 両型が併存する場合, 方法論上の差異がインタビュアーの技術やパーソナリティのぶれの範囲内におさまるか (地域ケアリング 24(11), 102-107) が問われる. よってインタビューガイドを洗練させ, 調査の構造化を強めるという選択肢があってよい. ただし, 信頼関係をもとに, 研究者の想定を超えた回答に出会える質的調査の豊かさは損なわれかねない. 社会福祉学領域では半構造化面接の形を取ることが多く, コロナ禍前後でこの傾向は変わらなかった (地域ケアリング 25(11), 62-66). だがオンライン型では, 半構造化の鍵となる非言語的手がかりのやりとりが難しい. 看護職等に向けた認知症ライフサポート研修のオンライン化 (日本認知症ケア学会誌 22(3), 564-574) からは, 主催者の映像資料に参加者が影響されやすい可能性が認められ, とくにグループインタビューでは場の設定に工夫を要すると考えられる. また, 一対一の医療ソーシャルワーカー向けZoomインタビュー (社会福祉学 64(1), 46-60) からは, スーパービジョンにおける支持・教育に先んじて管理機能が抽出された. ただし上司・部下の関係性を超えるネットワークも同時に抽出され, オンラインという研究方法を通した, 結果に対する脚色の有無・程度は継続的な検討課題である. 少なくとも対面型とオンライン型の方法論の軽視も, 信頼・能動 (対面)⇔管理・受動 (オンライン) といった即断も早計と思われる. 今後, 両型の比較・橋渡しに資する半構造化面接の要諦につきさらに研究を進めていく.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績で概要を示した成果は, 科研費の申請に際し提出した計画におおむね沿って, あるいはそこより発展的に獲得され, 3年計画の初年度として所期の目標をほぼ達成し得たものである. 今後さらに, インタビュー調査や学会発表, 論文作成などを継続して進めていく所存である.
|
Strategy for Future Research Activity |
申請時の計画に沿って, 研究の拡充を目指すことが原則である. さらに, ソーシャルワーカーや看護師といった, インタビュー対象者別の検討などについても視野を広げていく.
|
Causes of Carryover |
謝金の提供を予定していた調査に対し, 無報酬による支援が得られたことから次年度使用額が生じた. 研究の進捗に資する協力へは, お礼の気持ちに加えて相応の対価を申し出ることがやはり妥当と思われるが, 固辞により果たせなかった際は研究の活動範囲を広げる旅費・交通費にあてることで事業のさらなる推進を図る所存である.
|