2023 Fiscal Year Research-status Report
Study on data lifecycle management for open access to social survey data
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23K17577
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Research Institution | 大学共同利用機関法人情報・システム研究機構(機構本部施設等) |
Principal Investigator |
田中 康裕 大学共同利用機関法人情報・システム研究機構(機構本部施設等), データサイエンス共同利用基盤施設, 特任研究員 (20454093)
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Project Period (FY) |
2023-06-30 – 2026-03-31
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Keywords | オープンデータ / 社会調査 / データライフサイクル・マネジメント / データアーカイブ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、国際的なデータ・個人情報保護に関する社会制度の動向を踏まえ、学術データ、特に社会調査データの収集・利用・公開に至るまでのデータライフサイクルとそのマネジメント手法を検討し、学術研究データのオープンデータ化促進のための研究者支援を行うことを目的とする。2023年度の研究では、社会調査データのオープン化に向けて、主に欧米の事例調査を実施するとともに、日本の課題の明確化をおこなった。 学術研究データのオープン化に向けては、EUが2010年代から学術研究データのオープン化に向けた政策の立案を進め、公的資金による助成を受けた学術研究成果・データの原則オープン化に向けた取組を行っている。EUでは、オープンサイエンス・オープンデータを科学イノベーションの重要な戦略と位置づけて、EU全体としての共通政策の立案と「欧州オープンサイエンスクラウド」など共通インフラの整備を行っている。これらのオープンデータの実現に向けたEUの取組の基で、例えばイギリスでは、UK Data Serviceというデータアーカイブを構築し、学術研究のデータ公開を進めるとともに、エジンバラ大学にDigital Curation Centreを設置し、オープンデータに関する実務家の養成や研究者支援を進めている。 本研究では、イギリスを中心とした社会調査データのオープン化に関する取組を調査するとともに、Digital Curation Centreが主催する国際会議に参加し、オープンサイエンスに関する政策や取組の調査と関係者との意見交換を行った。また、専修大学との国際共同研究において、東アジアにおけるオープンサイエンス・オープンデータに関する各国の動向を報告し、意見交換をおこなった。 あわせて本研究では、オープンデータに関する世界的な動向を踏まえ、日本における政策動向の調査とオープンデータ化実現に向けた課題を抽出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、2023年度に社会調査データのオープンデータ化に向けて、各国の政策や取組についての動向調査を行うとともに、日本の現状と課題を明確にすることを目的としていた。この目的を達成するために取組としては、欧米の政策動向の調査と主にイギリスを中心としたヨーロッパにおけるデータアーカイブの事例調査を実施した。また、専修大学との共同研究では、本研究のテーマに関連し、日本・韓国・台湾・インドネシア、タイ、モンゴル、フィリピン、ベトナムの8カ国が参加する国際会議を開催し、東アジアにおけるオープンデータに関する政策動向やアーカイブの現状について報告し、意見交換を行った。 日本においても、オープンサイエンス・オープンデータの実現が重要な政策と位置づけられ、内閣府を中心に政策のとりまとめが行われている。こうした国内外の動向を踏まえ、関連する学会でもオープンサイエンス・オープンデータに関する議論が活発に行われ、学会などで関係者と議論することにより、日本の現状と研究者のオープンデータに関する問題意識、実現に向けた課題を共有することができた。このことから、2023年度の目的である。各国のオープンデータに関する動向の調査と日本における現状と課題の明確化についてはおおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年5月に開催されたG7広島サミット及びG7仙台科学技術大臣会合の共同声明において、公的資金による研究成果への即時オープンアクセスの支援を含むオープンサイエンスの推進が盛り込まれたことを受けて、2024年2月に内閣府より「学術論文等の即時オープンアクセスの実現に向けた基本方針」が示された。この基本方針では、公的資金により創出された学術論文のオープン化を原則義務づけるだけではなく、その根拠データに関しても、あわせてオープンデータとすることが求められる。この基本方針で示される学術論文・学術データの即時オープンアクセス化の指針は、これまでのオープンサイエンス・オープンデータに関する取組を大きく推し進めるものであり、研究者だけではなく、データアーカイブの実務を担う機関リポジトリや学術論文の出版を担う学術プラットフォーマーにも大きな影響を与える。本研究では、こうしたオープンサイエンス・オープンデータの基本方針に関する新たな政策や取組の動向を踏まえ、研究者だけではなく、機関リポジトリの実務者や学術プラットフォーマーなど関係者が広く参画する研究会・セミナー等を開催し、学術論文・学術データの即時オープンアクセス化という基本方針を達成するための課題の抽出や実現に向けた方策を検討する。
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Causes of Carryover |
2023年度社会調査データのオープン化に関する動向と課題の調査のため、会合費・調査委託費として50万円を計上していた。国内外でオープンサイエンス・オープンデータが重要な政策と位置づけられ、各国政府が主導する政策の立案や取組が実施されたことにより、学会等でオープンサイエンス・オープンデータに関する議論が活発に行われた。これにより予定した調査委託等を実施せずに、学会・国際会議参加による動向調査や関係者・機関等との意見交換、これに基づく課題抽出を行うことが可能となった。 上記理由により生じた残額については、2024年度に新たな指針として示された学術論文・学術データの即時オープンアクセス化に向けた調査、特に機関リポジトリ等のアーカイブ組織の現状と課題調査に活用する計画である。
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