2023 Fiscal Year Research-status Report
Exploratory research on "words" and "concepts" for cross-curricular citizenship education
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23K17613
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Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
後藤 賢次郎 山梨大学, 大学院総合研究部, 准教授 (10634579)
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Project Period (FY) |
2023-06-30 – 2026-03-31
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Keywords | 市民育成 / 教科横断 / 教師教育 / 教員研修 / 言葉・概念の捉え方 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題の「研究の目的」と「研究実施計画」に基づき,「調査パート」である令和5年度は,1)教科横断的な市民育成についての先行研究・実践の問題提起的な発表及び論文・書籍化,2)教科横断を視点に教職大学院の研究報告会に参加し情報収集を行い,以下の成果を得た。 1)については,同年10月,全国社会科教育学会(岡山大学)にて「教職大学院における規範的・原理的研究の活用-社会科教育の本質を議論することの意義と課題-」の題目で,他教科の院生が受講する科目で社会科の本質を議論することの意義と課題について発表した(指名)。また令和6年3月,「ガチ学びにおけるSTEAM教育実践のためのポイント-教師のリフレクションを通して-」の題目で口頭発表を行った。本発表は,他の科研費研究(研究代表者:豊嶌啓司)の一環で行われたものであるが,特にSTEM科目とA科目の関係に焦点を当て,教員研修を想定したアクティビティを提案することができた。論文・書籍については,現場教師の藤森啓太氏との共著「イメージマップ作りを通した市民育成に関する調査(1)-小学校国語科教師を対象に-」において,国語科教師の市民育成観の特質を明らかにすることができた。そして,「認知構成主義的なアプローチと社会構成主義的なアプローチ,普遍主義的なアプローチから見た市民像の実相」(『社会系教科の評価をめぐる理論と実践』風間書房)において,今日の教育研究・実践で主要な3アプローチの意義と課題を市民育成の点から考察した。これらは,市民育成に関する教科横断的な調査を進める上で,また現場教師を交えた研修教材やプログラムを開発していく上で重要である。 2)については,複数の教科の研究発表があることから立命館大学,弘前大学,佐賀大学の教職大学院研究発表会に参加し情報収集を行い,本研究課題に関わる論点を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
3カ年に渡る本研究課題は,調査パート,考察パート,開発・発信パートの大きく3パートを設け,推進していく。 このうち,調査パートである令和5年度は,「研究実績の概要」でも述べたように,研究代表者が関わる先行研究実践についてのアウトプットを進め,本研究課題の成果を高める経験とノウハウを得た。しかし,個人を対象にした調査に関しては,「スノーボールサンプリング法」の起点となる研究者,現場教師には調査協力の内諾を得たものの,スケジュール調整が困難で年度内に調査が実現しなかった。 ただし,各大学の教職大学院の研究発表会に参加し,情報収集を行うことで,教科横断的に市民育成をしていく上で課題となりそうな論点を見出すことができた(今後の研究の推進方策参照)。今後は調査を急ぐとともに,その論点を調査内容に反映することで,調査結果の質を向上していく。
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Strategy for Future Research Activity |
今後,本研究課題は考察パート,そして開発・発信パートへと進む。このうち,考察パートである令和6年度は,令和5年度の研究の成果と研究実施計画に基づき,引き続きデータを収集しつつ,収集したデータの分析によってその形成要件及び形成過程の究明を中心に行う。その際,1)市民,社会,社会科を中心とした言葉,概念の他,令和5年度の成果で得られた以下を調査内容に反映する;教育委員会との連携,または教育行政から要請される言葉(主体的対話的で深い学びの実現など)の解釈の違いが各教科に見られること;教育方法学や学習科学への関心と教科の特質への関心の強さによって,横断的な議論がしやすかったり難しかったりすること;一方向的な理論と実践(研究者・教育行政と院生・現場教師)の関係がしばしば見られたこと。2)以上について,「個」の独自性を追求することで全体の本質に迫ろうとする「PAC: Personal Attitude Construct(個人別態度構造)分析法」を用い,収集した市民育成のイメージマップの形状や構造(ネット状/ツリー状に連なった言葉まとまりは,どのような言葉によって形成されているか)に注目し,調査対象者と研究代表者との相互的な解釈を通して,市民育成観の特色を抽出し,モデル化する。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由は,サンプリングの起点となる調査対象者との日程調整が,先方のインフルエンザ罹患,本務等の都合で困難となる状況が発生し,調査が実現しなかったため,予定していた旅費の執行ができなかったことが大きい(約25万円)。物品は,購入予定していたiPadの価格高騰のため購入モデルを変更したりした結果,残額が約5万円発生した。 以上も踏まえ,令和6年度の使用計画としては,旅費と物品費が中心となる。旅費については,本来令和5年度にさせていただく予定だった対象者(山梨県内,福岡,愛媛,岡山)に速やかに調査を実施するとともに,引き続き調査と教材開発の打ち合わせ(福岡,愛媛,岡山),及び調査結果の学会発表のために執行する。もし不足が生じた場合は,zoomなどで対応し,可能な作業に置き換える。物品については,調査と教材の共同開発に必要なiPadは令和5年度に購入できたため,総残額13万弱のうち令和6年度は調査及び教材開発に必要な文房具,書籍等に6,7万円を当て,執行する予定である。
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Research Products
(3 results)