2023 Fiscal Year Research-status Report
Cognitive science of the Iki
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23K17641
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
野村 理朗 京都大学, 教育学研究科, 准教授 (60399011)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
河原 大輔 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (10450694)
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Project Period (FY) |
2023-06-30 – 2026-03-31
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Keywords | いき / ナラティブ / 自然言語処理 / 自己超越 / 東洋思想 / 曖昧性 / 九鬼周造 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究はこの「いき」を問う挑戦的研究として,手始めに「いき」の言語的側面に着眼し,その心理・生物学的基盤の理解を確立する。さらに,言語芸術における「いき」の核心となる要素を,その生成の可能性とともに,自然言語処理,身体性の両者の観点から検証する。すなわち「いき」を表現する川柳の刺激収集とその評価を行い、評定された川柳の“おもろさ“を推定・生成する深層学習モデルを構築,分析することによって「いき」の言語的要素を解明する。 そのために令和5年度は、認知と身体性の軸、これに加えて東洋思想の視点を包括し、いきの要素を含む「川柳」の面白さ、あるいは身体性に関わる構成要素について実験や調査、自然言語処理による検討を重ねてきた。 その主な結果として、1)内受容感覚にどれほど正確に気づくことができるかという信念の測定法として,Interoceptive Accuracy Scale(IAS)の日本語版IASを開発した. 逆。その方法論として281名(平均年齢40.74歳,SD: 8.75,範囲: 20-65,女性143名,男性137名,その他1名)にオンライン上での回答を求めて得られた解析の結果内的一貫性・再検査信頼性・構成概念妥当性を確認した。また自然言語処理により、2) おもしろい川柳を生成する自然言語処理モデルを開発した。モデルが生成した川柳を評価したところ、音数、川柳としての適否、川柳としておもしろさの3項目(後述)すべてでベースライン手法を上回り、手法の有効性を確認した。。以上の結果に加えて、3)東洋思想(「井筒俊彦の共時的構造化」等)の視座をふまえつつ構築した「いき」と相補的なモデルとなる「無心」モデルについての論考が書籍として印刷中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究プロジェクトは「いき」について、以下の3つの方法論・視点から迫るものである。すなわち、1.質問紙尺度の開発、2.言語的要素の解明、3. 「いき」の心理・生物学的基盤の解明、である。 項目1については、上記のとおりの成果を得ており、項目2は日本心理学会・認知科学会の大会企画シンポジウム等の開催を通じて情報発信してきた。特に2023年度は、言語芸術の一つである川柳に着目し、おもしろい川柳を生成する自然言語処理モデルを開発した。本モデルは、(1) 音数・トピックの学習、(2) 川柳の内容の学習、(3) 川柳のおもしろさの学習、という3段階によって川柳の特徴を学習し、おもしろい川柳の生成を可能とする。モデルが生成した川柳を評価したところ、音数、川柳としての適否、川柳としておもしろさの3項目すべてでベースライン手法を上回り、手法の有効性を確認した。 また項目3はデータの採取に若干の遅延が生じているため、令和6年度において注力する課題の一つとなる。以上これまでにとりうる実験や調査研究を重ね、上記の成果が得られたことから、概ね順調に研究が進んでいるものと評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
2024年度は、得られた研究成果の学術雑誌への投稿・掲載に注力するとともに、学会シンポジウム、HP等を通じた情報発信をする。また前年度までに構築した川柳の理解・生成モデルを改良しつつ、また、川柳以外の言語芸術の理解・生成に取り組むことによって手法の汎用性を検証する。心理指標に関しては、いきの構成要素に近似する心理指標のモデルへの取り込み、身体反応との関連を包括的に検討する。
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Causes of Carryover |
今年度において「いき」の特には言語的側面に関わる研究が大きく伸展した分、その身体反応(身体の自律神経系を指標とする)に関わる研究課題に遅れが生じ、その結果、予定していた実験経費・成果報告等に関わる使用額を次年度に繰り越すこととなった。
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