2023 Fiscal Year Research-status Report
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23K17665
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
森本 高裕 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 准教授 (00631780)
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Project Period (FY) |
2023-06-30 – 2026-03-31
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Keywords | 準周期系 / 薄膜接合系 |
Outline of Annual Research Achievements |
原子層薄膜系は、異なる種類の原子層を積層し、ファンデルワールス力により結合させることで、非常に多様でかつ高い操作性を持つ原子層薄膜接合系を構成することが可能である。特に、グラフェンや遷移金属ダイカルコゲナイドなどからなる原子層薄膜積層系の研究が近年急速に進展している。その一方で、異種の原子層からなる薄膜積層系においては結晶の周期構造が失われ準周期系となるため、その物性予測には通常のバンド理論を用いることができず多様な原子層薄膜積層系の系統的な解析は困難であった。本研究では、原子層薄膜積層系の物性を系統的に理解するために実空間・波数空間の両面からのアプローチ法を組み合わせて解析を行うことで、原子層薄膜積層系のもたらす新規物性を開拓することを目的としている。 今年度は、原子層薄膜積層系の電子物性を波数空間アプローチに基づいた解析手法の構築に取り組んだ。具体的には、各層がそれぞれ大きさの異なるブリルアンゾーンにより特徴づけられるが、それらを互いに折りたたんで統合することにより準周期薄膜系を波数空間表示に基づいて記述する手法の開発を進めた。特に、超伝導体にこの手法を適用することで、薄膜接合系にあらわれる準周期的な超伝導オーダーが少ない計算コストで再現できることを明らかにした。さらに、この手法に基づいてs波超伝導体と強誘電体の接合系のモデルを解析することで、反転対称性の破れた準周期超伝導体においてシフト電流とよばれる機構により光電流発生がおこることを確かめた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
原子層薄膜積層系の電子構造をブリルアンゾーンの折りたたみを通じて波数空間に基づいた解析手法の開発が進展した。これにより準周期超伝導体の解析を進めた。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度開発した波数空間に基づいた準周期薄膜積層系の解析手法を応用することで、薄膜積層系の超伝導状態について非線形光学応答や非線形伝導現象の解析を進めていく。
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Causes of Carryover |
旅費や人件費の支出が想定よりも少なくなったため次年度使用額が生じた。 次年度使用額は翌年度分とあわせて旅費や人件費として支出予定である。
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