2023 Fiscal Year Research-status Report
音響・光学ソフトモードに由来するフォノン系量子相転移の一般化
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23K17673
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Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
石井 悠衣 島根大学, 学術研究院機能強化推進学系, 教授 (50708013)
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Project Period (FY) |
2023-06-30 – 2026-03-31
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Keywords | 構造量子臨界点 / ソフトモード |
Outline of Annual Research Achievements |
秩序相に隣接して出現する新奇量子相の探索と解明は、現代の物性物理学の主要課題の1つである。本研究では、従来のスピン系に主眼の置かれた量子相転移研究と対比する形で、「フォノン系の量子相転移」という新たな概念に注目している。スピンを主役とする量子臨界現象に関しては実験・理論ともに基礎研究の積み重ねがある。例えば電子の有効質量の増大や超伝導の増強など、スピンが関与する何らかの物理パラメータが量子臨界点で増加することがその特徴である。一方、フォノンもスピンと並ぶ量子の1つであるにもかかわらず、フォノンはどちらかというと脇役であることが多く、フォノン主導の量子相転移というフレームワークは、これまで十分に認識されていない。そこで、「構造の」量子臨界性について独自に研究を進めた結果、最近、Ba1-xSrxAl2O4強誘電体において、x=0.1付近で音響ソフトモードの凍結が絶対零度まで抑制され(構造量子臨界点, sQCP)、x > 0.1の組成では、インコヒーレントに凍結したソフトモードによって、結晶の副格子内で並進対称性が3次元的に破れ、全体としては結晶性であるにもかかわらずフォノンの性質は完全に非晶質そのものである、「副格子ガラス状態」が実現していることを見出した。この状態はまさに、構造量子臨界性の主要な発現の1つであると考えられる。本研究では、この「副格子ガラス状態」に変化する過程での格子ダイナミクス変化を定量的に解析し、「フォノンの揺らぎ」に直結する物理パラメータとその変化の解明を目的としている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでの本研究による中性子非弾性散乱(粉末)実験から、Ba1-xSrxAl2O4ではsQCP組成に向かってフォノンスペクトルが大きく減衰し、非晶質固体で見られるブロードなスペクトルへと変化していることが明らかになっている。sQCPのダイナミクスの変化を捉える方法として、単結晶を用いた中性子非弾性散乱があるが、それには大型の単結晶が大量に必要であり、現実的ではない。そこで、まず小さな単結晶で測定が可能なX線非弾性散乱に注目し、BaAl2O4単結晶に対するX線非弾性散乱を行った。その結果、まずBaAl2O4のソフトモードの観測に成功しており、現在そのソフトモードのスペクトルを解析中である。このことを踏まえ、概ね順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
Ba1-xSrxAl2O4は音響フォノン分枝にソフトモードを持つ構造量子臨界物質であることが実験的に明らかとなった。そこで、今後は対象物質を広げ、音響・光学それぞれのフォノン分枝にソフトモードを持つ物質について、その構造量子臨界点での物性変化を明らかにしていく。
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Research Products
(3 results)