2023 Fiscal Year Research-status Report
Quantum Simulations of Quantum Parton Showers
Project/Area Number |
23K17689
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
山崎 雅人 東京大学, カブリ数物連携宇宙研究機構, 教授 (00726599)
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Project Period (FY) |
2023-06-30 – 2026-03-31
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Keywords | パートンシャワー / 量子アルゴリズム / 量子コンピューター / モンテカルロ / 量子的重ね合わせ |
Outline of Annual Research Achievements |
計画の初年度にあたる本年は、量子的なパートンシャワーと記述する量子アルゴリズムにおいて、運動学的なデータ(つまり、例えば放出される光子・グルーオンの運動量のデータ)を取り込む量子・古典ハイブリッドアルゴリズムを構成することに成功し、その成果をUC BerkeleyのChristian Bauer氏、So Chigusa氏と共に共著論文として発表した。(arXiv:2310.19881 [hep-ph]としてプレプリントサーバーにて発表後、すでにPhys. Rev. A 109, 032432 (2024) として掲載済み。)この研究では当初の目的を大きく超える成果が得られた。まず、古典的なモンテカルロ法において知られていたベトー(veto)というテクニックを量子・古典ハイブリッドアルゴリズムに(おそらく世界で初めて)持ち込み、量子アルゴリズムを大幅に簡単化することに成功した。実際、量子回路において必要とされる2-qubitゲートの数はモンテカルロのステップ数について線形でしか増加せず、実用上も問題ないアルゴリズムが構成されている。さらに、始状態のエンタングルメントが小さい時には古典計算機でもシミュレートができるという驚きの結果が得られており、量子パートンシャワーのシミュレーションが研究開始以前と比べると圧倒的に現実的な問題になったといえ、この分野における一つのマイルストーンではないかと考えている。より広い文脈で考えると、今回の量子アルゴリズムはいわゆるダイナミックな量子回路の例になっており、そこでは量子回路の途中での測定が行われると同時にその結果が量子回路自体のパラメーターとしてフィード・フォーワードされ、さらに量子計算が続くこと設定になっている。このような回路の研究は将来的な量子誤り耐性を持つ量子コンピューターにとって不可欠なものであり、時宜に適ったものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初計画ではパートンシャワーに運動学的情報を取り入れた量子・古典ハイブリッドアルゴリズムを構成することを大きな目標としていたが、本年度の研究においてすでにそれを達成することができた。これは想定を大きく超える順調な進展である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の可能性として、まず今回構成した量子的なベトーアルゴリズムをより一般的な文脈で実現できないかを探りたい。古典的なモンテカルロ・シミュレーションにおいてはベトーの手法は幅広く用いられており、具体的にモンテカルロ法が適用される問題の詳細によらずに適用可能である。したがって、今回量子パートンシャワーにおいて議論された量子ベトーアルゴリズムは、量子効果が重要になるモンテカルロ・サンプリングが必要になる問題一般に広く適用できると期待され、例えば物性物理学における量子多体系の問題などでも適用が可能であると考えており、このような応用可能性を探りたい。一方、量子パートンシャワーそのものについてもさらに研究を進め、例えば始状態のエンタングルメントが大きい場合のシミュレーションや、また実際の量子デバイスおよび古典計算機でのシミュレータでの量子シミュレーションを実行することで、今回のアルゴリズムのノイズによる影響、またいわゆる量子エラー緩和(quantum error mitigation)の方法によりエラーを軽減することも試したいと考えている。
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Causes of Carryover |
当初の想定を超えて研究が大幅に進展したため、より野心的な研究計画を目指すことに方針転換し、本年度は研究内容そのものを充実させることに専念する方針に変更した。したがって、海外出張などのイベントは来年度に延期し、当面はzoomや電子メールでのやり取りを中心に進め、あらかじめ下準備を入念に行なった上で来年度により大掛かりに研究資金を活用することとした。貴重な研究費用をより有効に活用するという意味において、そのような決断は十分な合理性を持つと考えている。また、2024年度秋には東京大学 Kavli IPMU において国際研究会"Focus Week on Non-equilibrium Quantum Dynamics"を開催するほか、2024年冬にはKEKにて高エネルギー物理学と量子シミュレーションの境界領域においてやはり大型の国際研究集会を開催予定である。近年海外からの研究者の招聘費用(特に航空券)が高騰しており、これらの出費に対応する可能性を残しておく上でも、来年度の研究費を当初計画よりも積みましていく必要があった。
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