2023 Fiscal Year Research-status Report
固体電解質のイオン輸送を用いた環境調和型電気化学表面プロセスの開発
Project/Area Number |
23K17725
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
村田 順二 立命館大学, 理工学部, 教授 (70531474)
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Project Period (FY) |
2023-06-30 – 2025-03-31
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Keywords | 固体電解質 / パターニング / 陽極酸化 / アノード溶解 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,「固体電解質を利用した液体フリー電気化学表面プロセス」により,新たな環境調和型の除去加工・表面改質などのメカニズムを明らかにし,その結果による加工プロセスの技術体系を構築することである.2023年度に得られた主な成果は以下のとおりである. (1) Cuのアノード溶解を用いたナノパターニング:固体電解質(Polymer Electrolyte Membrane: PEM)スタンプとCuの界面で発生するCuのイオン化によってマイクロ・ナノスケールのパターニングを実現した.PEMの水分含有の有無および加工環境がパターン解像度に与える影響を評価した結果,水の電気分解が生じない低い電圧において加工することで,PEMの状態や環境に影響されないロバストな加工が実現され,優れたパターニング精度が得られることを見出した.これにより,線幅70 nm程度のL&Sパターンを実現した.
(2) Si表面の微細酸化膜パターンの形成と光学応用:Cuと異なりSiの表面にはPEMスタンプとの接触点において酸化が生じる.数秒単位のごく短時間の電解によって,大きさ500 nm~2 μm,高さ数nmの酸化膜パターンを形成することができる.これをエッチングマスクとして用いた結果,深さ数 μmの高アスペクト比のパターンを施すことができた.酸化膜パターンは高い親水性を示すため,湿潤空気を吹きかけるとパターン上にのみマイクロ液滴が形成されることを明らかとした.液滴は数秒単位で蒸発するため,ダイナミック回折格子や暗号化あるいは偽造防止などの技術に応用できる可能性を示した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
CuやSiについて、ナノスケールのパターニングを実現する加工条件を見出すことができた。さらに、本技術によって独自に発現される表面のアプリケーションも提唱することができ、当初の計画を上回る成果が得られたと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
2024年度の研究では、産業応用を見据え、PEMの寿命に与える諸因子の影響を探索する。Cuの加工では、イオン化した金属がPEM内部に拡散しPEMのスルホン酸と結合することで、イオン伝導性が低下する現象が見られた。これにより加工速度の低下がみられたが、逆電解を印加することで、PEM内部のCuを排出できる可能性を見出している。これをベースにPEMの長寿命化に向けた研究を行う。また、加工したパターン表面のさらなるアプリケーションを探索する。
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Causes of Carryover |
共同研究者との打合せをオンラインで実施したことにより旅費が不要となり、少額の未使用額が発生した。2024年度の学会参加旅費等として使用する予定である。
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