2023 Fiscal Year Research-status Report
Proof-of-Concept of a contactless acoustic microreactor for Lab-in-a-drop
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23K17732
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Research Institution | Kogakuin University |
Principal Investigator |
長谷川 浩司 工学院大学, 工学部, 准教授 (90647918)
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Project Period (FY) |
2023-06-30 – 2026-03-31
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Keywords | 非接触流体マニピュレーション / 音場浮遊法 / 液滴 / Lab-in-a-drop / 混合 / 可視化計測 / 混相流 / 非線形ダイナミクス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、音響場によって浮遊させた液滴の非接触混合および化学反応を対象として、Lab-in-a-drop実現のための「非接触音響マイクロリアクター」の概念実証をすることである。 本研究では液滴浮遊に音響場を活用するため、対象とする流体の種類の制限がなく、pL~μLオーダーの微量な流体を非接触操作可能という利点がある。一方、単一および複数液滴の浮遊、輸送、合体、蒸発、反応等の各種要素現象の物理メカニズムは十分には理解されていない課題がある。申請者のこれまでの研究によって、液滴界面をモード振動させることで液滴内の混合が促進されることを可視化している。これは、液滴界面のモード振動に対応して形成される液滴内部の振動流が混合を促進させるものと考えられ、その根幹には界面振動によって生じる液滴内部の強制対流場が存在すると推測されていた。その仮説検証のために、本年度は紫外線レーザーおよび蛍光粒子を用いて界面モード振動下の液滴の内部流動場の可視化計測体系を構築し、混合過程の定量的把握に成功した。また液滴系や振動モードの次数の影響を系統的に調査するとともに、得られた結果に対して混合指標を導入することで液滴内混合度合いの指針も明らかにした。 得られた成果については、2023年度は6件の学会発表を行い、2報の原著論文が出版となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究で対象とする①「浮遊液滴内の混合促進メカニズムの仮説検証(令和5年度)」および②「浮遊液滴内の反応過程の実現可能性検証(令和6、7年度)」について、当初の計画通りに①を遂行した。 製薬工程等での活用が見込まれる液体試料の非接触混合では、音場を変調させ、液滴界面にn次のモード振動を印加することで、分子拡散と比して桁違いに短時間での液滴内混合を実現(図3)している。しかし、混合促進のメカニズムは未解明であり、浮遊液滴内の反応過程に至っては、実験室レベルですら先行研究が皆無と言える。そのため「音場浮遊液滴内でどのようなメカニズムで混合されるのか」という問いに答えるために、新規の可視化計測体系を構築し、紫外線レーザーおよび蛍光粒子を用いて界面モード振動下の液滴の内部流動場の可視化および定量化に成功した。液滴の界面モード振動で駆動される液滴内の強制対流が分子拡散を桁違いに超える混合促進効果をもたらしていることを明らかにした。 以上より、本研究課題の現在までの達成度は、「おおむね順調に進展している」に該当すると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
音響場によって浮遊させた液滴の非接触混合および化学反応(以下、反応)を対象として、Lab-in-a-drop実現のための「非接触音響マイクロリアクター」の概念実証のためには、液滴内の混合および反応現象の物理メカニズムを理解するとともに、動的な現象を精緻に制御する必要がある。そのため本研究では、①「浮遊液滴内の混合促進メカニズムの仮説検証(令和5年度)」および②「浮遊液滴内の反応過程の実現可能性検証(令和6、7年度)」の2点を対象としている。 次年度には非接触で任意の反応過程の実現が可能なのか」といった挑戦的課題に取り組むべく、 初年度の研究に基づき、界面モード振動によって液滴内の混合促進が検証された場合、反応性異種液滴を合体させた際の反応促進も期待される。そこで次年度は、初年度の知見をベースに、反応性異種液滴の混合・反応過程を対象とする。具体的には、pHに反応するBTB溶液を用いた着色現象や酢酸と炭酸水素ナトリウムによる発泡現象、ウーゾ効果によるエマルション生成を対象とし、既知の反応系で概念実証を試みる。最終年度は、印可音圧や液滴サイズ等の影響を系統的に調べることで混合・反応過程の最適化条件の探索、すなわち非接触音響マイクロリアクターとしての技術基盤の整備を目指す。
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Causes of Carryover |
購入した物品のディスカウントによって当初想定より5,791円少ない経費使用となったため。
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