2023 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23K17903
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
夛田 博一 大阪大学, 大学院基礎工学研究科, 教授 (40216974)
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Project Period (FY) |
2023-06-30 – 2025-03-31
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Keywords | 金属ナノ接合 / 量子化熱伝導 / 量子化電気伝導 |
Outline of Annual Research Achievements |
金属電極の接合部分を原子スケールにまで小さくすると、室温下でも量子効果が強く現れることが理論的に予測されている。これまで、STM を用いた実験で、ナノ接合の電気伝導度や熱起電力、熱伝導度の量子効果も計測できるようになっている。本研究では、金属ナノ接合、ヒーター、温度センサーを窒化シリコン膜上に電子ビームリソグラフィーを中止とする微細加工技術によって作り込み、クライオスタットに組み込むことでナノ金属接合の電気伝導度と熱伝導度の温度依存性を同時計測した。ナノ接合の作製は、エレクトロマイグレーションによって、幅 100 nm、厚み 50 nm の金細線を狭窄化して行った。この際、断熱性の高い環境で問題となる通電時の急激な温度上昇に伴う細線の抵抗変化を考慮した新たな制御アルゴリズムを開発することで再現性の良いナノ接合の作製が可能となった。これにより、幅 100 nm 程度のナノ細線から数原子程度のナノ接合が形成されるまでの一連の過程を観察できる手法を確立した。電気伝導度および熱伝導度を 300 K から 20K までの温度範囲で計測したところ、電気伝導度はほぼ一定に保たれているのに対し、熱伝導度は温度に対して比例して変化した。これは、電子による熱伝導を仮定した量子化熱コンダクタンスの定義ともよく一致し、測定結果から見積もられるフォノンによる熱伝導は、室温での熱伝導度の 6 %程度であり、理論計算による予測とも一致し、広い温度範囲で、ナノ接合の熱伝導度と電気伝導度を測定できる手法を確立した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
素子外部との熱の出入りを最小限にするために確立した宙空構造の作製技術を利用し、極低温でも安定して測定できる環境を整えた。素子が測定途中で壊れてしまうことが一定の確率でおこっていたが、素子の作製プロセスの工夫に加え、測定プログラムを見直すことで、改善された。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、金属の種類や構造を変化させるため、メッキによる薄膜作製を取り入れるとともに、熱伝導度、熱起電力、電気伝導度を広い温度範囲で安定に同時計測し、理論的な予測のみにとどまっていた現象を実験面から検証する。安定して測定できる素子の歩留まりをあげるため、電極部分の作製プロセスを再検討する。
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Causes of Carryover |
今年度は、既存の手法およびプログラムの改良を中心に研究を推進し、想定以上に個々の作業に時間を要したたため、新たに試料等を購入することなく計画通りの成果が得られた。次年度は、確立した手法をもとに、多数の試料を対象に測定を行うため、金属試料、薬品、さらには外部共同利用装置の利用費などに充当するとともに、成果の公表のための発表および情報収集のための旅費に使用する。
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Research Products
(2 results)