2023 Fiscal Year Research-status Report
Synthesis of Isolable Compounds Featuring a Pi-type C-C Single Bond
Project/Area Number |
23K17910
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
岩本 武明 東北大学, 理学研究科, 教授 (70302081)
|
Project Period (FY) |
2023-06-30 – 2025-03-31
|
Keywords | π電子系 / 高歪み化合物 |
Outline of Annual Research Achievements |
π結合は有機分子に多様な構造、反応性と機能を付与する重要な化学結合である。本研究では、これまでに安定に合成された例のない、π結合のみから構成される炭素-炭素結合(π型C-C単結合)を持つ化合物に着目し、今年度はその化合物を合成する上で重要な前駆体になる1,4-ジシラブタトリエンの合成条件の最適化を行った。その結果、1,4-ジシラブタトリエンの前駆体の合成スケールを従来の約3倍に向上させることを達成し、1,4-ジシラブタトリエンの前駆体をグラムスケールで合成することに成功した。続いて、合成した1,4-ジシラブタトリエンの前駆体を1,4-ジシラブタトリエンへ変換させる反応条件を精査し、反応に用いる還元剤を最適化することで1,4-ジシラブタトリエンの収率を従来の17%から42%まで向上させた。これにより100 mg単位で1,4-ジシラブタトリエンを合成することが可能になった。合成した1,4-ジシラブタトリエンを用いて、この化合物の詳細な紫外吸収スペクトル測定し、吸収の末端が800nm付近まで伸びていることを見出した。さらにこの化合物がエタノールと反応し、エタノールが1,4-ジシラブタトリエン部分に1,4付加することを見出した。更に合成した1,4-ジシラブタトリエンをビシクロ[1.1.0]ブト-1(3)-エン誘導体へ光反応で変換させる条件を精査し、高強度のLED光を用いて照射波長を最適化することで、反応時間を大幅に短縮させることに成功した。このビシクロ[1.1.0]ブト-1(3)-エン誘導体は本研究で着目するπ型C-C単結合を持つ化合物を合成する上で重要な化合物であり、今後研究を進める上で十分な量を合成する方法を確立させた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究で着目するπ型C-C単結合を持つ化合物の有望な前駆体として、ビシクロ[1.1.0]ブト-1(3)-エン誘導体の高収率合成法を確立させた。この化合物は多段階で合成する必要があるため、反応条件の最適化には時間を要したが、順調に本研究を進められていると考えている。
|
Strategy for Future Research Activity |
今年度確立させた合成法を用いてビシクロ[1.1.0]ブト-1(3)-エン誘導体を合成し、その構造の詳細を各種分光学的測定や反応などから明らかにする。続いてこの化合物の橋頭位間炭素-炭素二重結合への付加反応や還元反応により、π型C-C単結合をもつと期待されるビシクロ[1.1.0]ブタン誘導体を合成する。この化合物の橋頭位間結合の電子状態を明らかにする。特にπ電子系に電子的摂動を与える官能基を持つ誘導体を合成し、分子構造や酸化還元特性などの基本的性質を解明する。
|
Causes of Carryover |
「現在までの進捗状況」のところにも記載したように、π型C-C単結合を持つ化合物の有望な前駆体であるビシクロ[1.1.0]ブト-1(3)-エン誘導体の合成条件の最適化に時間を要した。これはこの化合物を合成するための反応が多段階であり、一部の反応に収量の再現性が乏しいものがあったためである。本研究の達成のためには、この化合物を十分な量供給する方法の確立が必要だったため、次年度使用額が生じた。次年度、物品費は主に化合物の合成およびスペクトル測定のための有機無機試薬および高純度の有機溶媒、旅費は学会参加のための旅費、その他は、化合物の同定のためのスペクトル測定の依頼費や英語論文校閲費等に主に用いる予定である。
|