2023 Fiscal Year Research-status Report
Synthesis and function of superiptycenes
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23K17919
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
新藤 充 九州大学, 先導物質化学研究所, 教授 (40226345)
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Project Period (FY) |
2023-06-30 – 2026-03-31
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Keywords | イプチセン / イノラート / アントラセン / アライン / 有機合成 / 大環状分子 |
Outline of Annual Research Achievements |
トリプチセンが連続的に連なったイプチセンの一般的な合理的合成法の確立を目指して、アラインとアントラセンの両者の性質を併せ持つアンビデントアントラセンの前駆体としてジブロモー9,10-エポキシアントラセンを合成した。これを原料として、アントロンおよびアントラサインをそれぞれ調製し環化付加させることで逐次的にイプチセンを拡張した。イプチセンの9-ヒドロキシ基は対称性を高めて精製を簡便化するためにBarton法により還元脱離させた。この手法を繰り返すことで、最終的にベンゼン環が13枚の史上最長の鎖状スーパーイプチセンの合成に成功した。この成果はアンビデントアントラセン法の妥当性と有用性を示している。また、スーパーイプチセンには堅固で規則的な分子空間が形成され、ピリジンが包接されたイプチセンのエックス線結晶構造解析に成功した。 大環状イプチセンの合成に向けて、既知のアントラセンとベンゾキノンによるDiels-Alder型環化付加反応も試みたところ、良好な結果が得られたので利用することにした。ヘキサブロモトリプチセンに対してアラインを2か所発生させ、そこにテトラジン法でイソベンゾフランを経てアントラセンが2枚組みこまれたトリプチセン誘導体を合成した。これに対してベンゾキノンを環化付加させたが面選択性は発現せず想定された異性体の混合物が得られた。置換基を入れて片面のブロックを試みたが現時点で異性体生成比に関して効果は表れていない。今後、より効果的な置換基の導入で面選択制の検討を行う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
第一の目標であるアンビデントアントラセン法を確立させることができ、史上最長のスーパーイプチセンの合成を達成した。大環状イプチセンは選択性や収率を度外視すれば、強引に合成するめどは立った。今後は選択性を高めた効率的な合成法を目指す。以上を鑑みると、順調に研究は進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
大環状イプチセンの合成に注力する。この量的合成が達成できれば、分子認識や包接に関して物性検証を行う。 現在、トリプチセンの生体作用について研究を進めており、これと並行してスーパーイプチセンにも適用する予定である。
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Causes of Carryover |
研究補助者の雇用を予定していたが、年度内の雇用とはならなかったことと、英文校正および論文投稿料が割安で済んだために若干の余剰が生じたが、物品費が物価高騰のあおりを受けて予想以上に支出したため、結果的に、次年度使用額は圧縮された。
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