2023 Fiscal Year Research-status Report
配位子間水素結合を駆動力とする三層コアシェル金属ナノクラスター合成法の開発
Project/Area Number |
23K17930
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
磯崎 勝弘 京都大学, 化学研究所, 准教授 (30455274)
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Project Period (FY) |
2023-06-30 – 2025-03-31
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Keywords | 金属ナノクラスター / 水素結合 / 自己組織化 / ボトムアップ合成 / 触媒 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,配位子間水素結合による熱力学的安定化を駆動力として利用することで,中心,シェル,及び表面に異なる金属種を逐次的に積層させ,従来法では合成が困難だった三層コアシェル金属ナノクラスターを構築する系統的合成手法を確立し,これらの合金クラスターの物性解明と触媒利用法の開拓を目的として研究を行った。研究初年度は,配位子間水素結合の重要性を明らかにすることを目的として,Au25(SR)18クラスター合成を基本反応とし,水素結合部位の個数,チオール―アミド間の炭素鎖長,アミド上の置換基,について検討を行った。その結果,期待した通りに水素結合部位を有するチオラート配位子を用いれば積層型合成が効率良く進行することを見出した。また,本反応において,水素結合部位は一つでも十分に反応が効率良く進行し,チオール―アミド間の炭素鎖長は大きく影響しないものの,アミド上置換基は反応速度に大きく影響を及ぼすことが明らかとなった。温度可変NMR測定から,クラスター上の配位子間に水素結合が形成されており,熱力学的安定性が向上していることが確認された。また,配位子間の水素結合は固体状態でも確認でき,単結晶構造解析によりクラスターが分子内,及び分子間の水素結合により緊密にパッキングしていることが明らかになった。また,異種金属の適用についても検討を開始しており,積層型合成の原料クラスターとして異種金属を導入したPdAu12, PtAu12を用いても積層型合成反応が効率良く進行し,対応するPdAu24, PtAu24クラスターが得られることを明らかにした。これらの研究成果は国内学会にて成果発表を行うとともに,現在,論文の投稿準備中である。 また,これらの研究過程において,クラスター同士が可視光照射条件下において融合し,これまでに知られていない組成のクラスターを与える新奇反応を発見し,現在論文投稿中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究は研究課題を二つの項目に分けて実施予定であり,初年度は「ボトムアップ合成に必要なチオラート配位子の水素結合特性の解明」,次年度は「中心,シェル,表面に適用可能な金属種の解明」を主要な課題として研究を進めている。初年度の課題であるチオラート配位子の水素結合特性の解明については,ほぼ想定した通りに研究が進み,ボトムアップ合成の原理はおおよそ解明されているため,研究は順調と言える。また,次年度の課題として異種金属の適用性を挙げているが,すでに初年度に中心金属については適用可能性を示すことに成功している。また,予備的な検討として,表面金属についても検討を開始しており,基礎的知見はすでに得ていることから,初年度の成果は想定以上と言える。 さらに,本研究課題を推進する過程で,研究開始当初には想定していなかった新たなクラスター間の光誘起二量化反応を見出し,現在論文投稿中である。本成果は積層化だけでなく,多量化も活用して多機能触媒を創製できる基礎的知見であり,当初想定以上の成果が得られていると考えている。 上記の理由から,初年度は当初の計画以上に研究が進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究は想定した通りに進んでおり,推進方策に大きな変更は無い。次年度課題として設定していた異種金属の導入について予備的検討を行った結果,当初想定していた通りに,金属種によっては生成物の合金クラスターが熱力学的に不安定であることが示唆されている。従って,不活性雰囲気下で合成・精製を行うことで,不安定な合金クラスターについても構造解析を行い,本手法の有用性を示す。 初年度研究期間中にAu25クラスターの超原子コアと表面金属錯体部位の双方の触媒作用を同時に活用する二重触媒作用を見出し,論文発表を行った。本研究により得られる合金クラスター合成手法を用いれば,超原子コアの光機能,および表面金属錯体部位の触媒作用を任意に組み合わせて多機能触媒を創製できる。そこで,本研究により得られた合金クラスターの機能開拓の一環として,合金クラスターを用いる多重触媒反応の開発を行う。 また,初年度の研究において,当初想定していなかったクラスター間の二量化反応を見出しており,新たな機能性クラスター群創出の起点となることが考えられる。そこで,二量化したクラスターを原料として用いたボトムアップ反応の検討についても併せて行う。
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Causes of Carryover |
当初予定では合金ナノクラスターの金属配置の決定のために初年度にもSPring-8への出張旅費を計上していたが,想定外に生成物の単結晶化に成功したため,学内所有の単結晶解析装置で構造解析に成功した。その結果,おおよそSPring-8出張旅費として計上していた10万円強の経費が次年度使用額として残った。一方で,研究成果は想定した以上に得られており,国際的に高い評価を得られるジャーナルへの成果発表を行うことができた。そこで,次年度は国際学会での成果発表を想定よりも多く行う予定であり,次年度使用額となった経費は国際学会出張旅費に充てる予定である。
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Research Products
(14 results)