2023 Fiscal Year Research-status Report
オプトエレクトロニクス結晶を利用した高輝度テンダーX線用分光素子材料の探索
Project/Area Number |
23K17936
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
為則 雄祐 東京都立大学, 総合研究推進機構, 教授 (10360819)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
河村 直己 公益財団法人高輝度光科学研究センター, 分光推進室, 主幹研究員 (40393318)
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Project Period (FY) |
2023-06-30 – 2025-03-31
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Keywords | テンダーX線 / 分光結晶 / YAG結晶 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年,X線分光の分野では放射光を中心にテンダーX線と呼ばれる1~4 keV程度の領域が注目を浴び,その利用が活発化している.一方で,X線分光の鍵となる分光素子は波長によって適切に選択しなければならず,概ね 2 keVを境に低エネルギー側で回折格子が,高エネルギー側では分光結晶が用いられている.両者の間に位置するテンダーX線の領域は,古くは“X線の暗黒領域”とも呼ばれ,放射光施設を中心とした今日のX線分光においても未だ決定的な分光技術は確立しておらず、X線分光研究の一つの制約となっている.テンダーX線領域を対象とした分光技術の開発は,X線分光における古くて新しい課題の一つである.この様な背景のもと,高輝度放射光を光源としたX線分光測定においても,テンダーX線領域で実用可能なX線分光素子を探索し,この領域の新しい分光技術を開拓することを目的として研究を実施する.
本年度は、YAG結晶を光学材料として選択し,X線分光結晶の試作を行った.レーザー分光用YAG結晶の製作や加工実績を有する業者を3者選定し,それぞれのメーカーが持つ技術や実績に応じて,(111)面で切り出した平面結晶,(111)面で切り出した平面結晶を加工した球面湾曲結晶,(111)面以外の面指数を持つ平面結晶の作成を実施した.また、製作した結晶の評価を行うため,学内のX線回折装置の利用準備を進めるとともに,計測に必要な試料ホルダの設計を行った.次年度は、これまでに製作した結晶の評価計測を行い,結晶の結晶性や反射率などを評価するともに,その結果を参照してより高品質な結晶開発を進める予定である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
設計した結晶を製作できる可能性を持つ業者を3社選定し,テーマに応じた結晶の試作まで進めることができた.課題申請時のスケジュール通りに進んでおり、おおむね順調に進展していると判断できる.
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,試作した結晶の結晶性や反射率などを評価し,X線分光結晶としての実用可能性について検討を行う.得られた評価結果は試作した結晶の製作・加工方法にフィードバックし,より高品質な結晶の作成方法を模索する.また,YAG結晶がX線分光結晶として適していないと判断された場合は,他のオプトエレクトロニクス結晶を利用したX線分光結晶の開発に切り替えて,研究をすすめる.これらの開発・評価により満足のゆくX線分光結晶が製作できた後は,放射光施設を利用したXAFS計測に導入し,従来結晶との比較による評価を進める.また,近年利用が活発になりつつX線発光分光法への展開を目指し,それに適した結晶の設計・試作を進める.
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Causes of Carryover |
X線分光結晶の試作をメーカーと協議したが,一部のメーカーで納期が間に合わなかったため,次年度に試作を見送った。そのため,一部の費用を次年度に繰り越すこととなった.また、放射光施設を利用した結晶の評価計測も計画したが,試作した結晶の納品と課題申請時期が整合しなかったため,こちらも次年度に実施することとしたため,合わせて繰越金が生じた.いずれも経費の用途ならびに実施計画は明確になっているため,新年度が開始次第,継続して研究を進める予定である.
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