2023 Fiscal Year Research-status Report
極性酸化物クラスター分子を基盤とする外場応答性プロトン伝導体の創成
Project/Area Number |
23K17952
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
内田 さやか 東京大学, 大学院総合文化研究科, 准教授 (10361510)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
桐谷 乃輔 東京大学, 大学院総合文化研究科, 准教授 (80568030)
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Project Period (FY) |
2023-06-30 – 2025-03-31
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Keywords | ポリオキソメタレート / 極性酸化物クラスター / プロトン伝導 |
Outline of Annual Research Achievements |
ポリオキソメタレート(POMs)は、金属酸化物の断片と見なすことができる陰イオン性のナノサイズのオキソクラスターであり、その多様な組成と構造が広範に研究され、触媒や電子工学など様々な分野での応用が期待されている。触媒や電子工学に関連するプロトン伝導は、材料化学で注目を集めており、POMアニオンはプロトン担体の密度と移動性において有利である。最近、強誘電性を示す極性POMへの注目が高まっているが、極性がプロトン伝導に対して負の影響を示すと考えられていたため研究例は少ない。本研究では、極性POMを使用し、水やポリマーなどの極性のあるプロトン伝導種を配列させ、効率的なプロトン伝導経路を構築できることを示した。具体的には、プレイスラー型の極性POMとカリウムイオンから成るイオン結晶を示し、実用的な応用に必要とされる10-2 S/cmを超える超高プロトン伝導性を示した。これに対し、非極性POMを含むイオン結晶は、プロトン伝導性が一桁低いことがわかった。構造(単結晶X線構造解析)および分光学的研究(赤外分光)と理論計算(DFT, 分子力学計算)を組み合わせ、プロトン伝導種が極性POM配列により整列し、プロトン伝導に有利な水素結合ネットワークを形成することが明らかになった。本研究により、POM分子の設計による分子化学と長距離プロトン伝導メカニズムの探索による固体化学を統合による材料設計が可能となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在、本研究に即した基礎科学的な内容について一通りまとまり、論文投稿中(JACS in revision)なので。
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Strategy for Future Research Activity |
適切な極性POM、ポリマー、対カチオン(カリウムイオン以外)の選択により、よりプロトン伝導性能が高い結晶性複合体の合成を行う。それとともに、デバイス化の研究を進める。
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Causes of Carryover |
装置修理や消耗品の購入が想定より少なかったため。人件費・謝金として使用予定。
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