2023 Fiscal Year Research-status Report
メソポーラスシリカナノ粒子を物理架橋点に用いた高強度シリコーン材料の創製
Project/Area Number |
23K17962
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
下嶋 敦 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (90424803)
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Project Period (FY) |
2023-06-30 – 2025-03-31
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Keywords | シロキサン / エラストマー / ナノ粒子 / メソポーラスシリカ |
Outline of Annual Research Achievements |
シロキサン結合(Si-O-Si)からなるシリコーン樹脂は耐熱性、耐候性、絶縁性などに優れることから、幅広い分野で利用されている。本研究では、貫通孔を有するメソポーラスシリカナノ粒子を用い、ポリジメチルシロキサン(PDMS)を物理架橋することで新しいシリコーン系エラストマーを作製することを目的としている。まず、粒径50 nm未満の球状メソポーラスシリカナノ粒子を作製し、粒子の分散性を保持した状態で、鋳型である界面活性剤の除去と表面シラノール基のトリメチルシリル化を行った。固体NMR分析, 電子顕微鏡観察、窒素吸着測定などにより詳細なキャラクタリゼーションを行った。次に、得られたメソポーラスシリカナノ粒子の分散液を様々な平均分子量のPDMSと混合した後、溶媒を揮発させるという簡便な操作によって複合化を行った。分子長がメソポーラスシリカナノ粒子よりも十分に大きい、比較的高分子量のPDMSを用いた場合、透明なエラストマーを得ることに成功した。電子顕微鏡観察により、エラストマー中にメソポーラスシリカナノ粒子が凝集せずに分散していることが確認された。また、熱重量分析により、メソポーラスシリカとの複合化によってPDMSの分解温度が大きく高まったことが確認された。メソ孔を持たない無孔質のシリカナノ粒子を用いてPDMSとの複合化を行った場合、溶媒揮発にともなって粒子の凝集が起こり、透明なエラストマーは得られなかった。以上の結果から、メソ孔がPDMSとの複合化に重要な役割を果たしていることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画に従って、メソポーラスシリカナノ粒子を架橋剤として用いてポリジメチルシロキサン系エラストマーの作製に成功しており、順調に研究が進展していると判断される。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに得られたエラストマーにおいて、メソポーラスシリカが化学架橋点ではなく、物理架橋点として働いていることを証明することが重要である。そのために、合成面ではPDMS末端のシラノール基をキャッピングすること、また分析面では二次元固体NMRによる評価を行う予定である。また、得られた透明エラストマーの力学的特性を評価するためにスケールアップ合成を行い、動的粘弾性測定、引っ張り試験、剪断試験等を実施する。加えてシリカナノ粒子と化学架橋した従来型のシリコーン樹脂を比較対象として、本設計の優位性・有用性を具体的に明らかにする。
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Causes of Carryover |
当初予定していたよりも早い段階でエラストマーの作製に成功したため、消耗品や分析費の支出が抑えられた。一方、初年度の検討により、メソポーラスシリカナノ粒子が化学架橋点としてではなく、物理架橋点として機能していることを証明するには、より精密な合成と分析が必要であることが明らかになったため、次年度使用額はそれらの検討にあてる予定である。
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