2023 Fiscal Year Research-status Report
Prodrug Strategy by Diels-Alder Reaction with Cancer-Derived Acrolein
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23K17971
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
田中 克典 東京工業大学, 物質理工学院, 教授 (00403098)
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Project Period (FY) |
2023-06-30 – 2025-03-31
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Keywords | プロドラッグ / アクロレイン / がん / 細胞内反応 / ディールス・アルダー反応 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、報告者が最近発見したがんで選択的、かつ大量に発生する共役アルデヒド「アクロレイン」に着目し、これと高選択的なディールス・アルダー反応を実施することで、がん選択的に抗がん剤を放出し効果的な治療を実現することを目的とした。2023年度は特に下記の点について検討を行った。 がん細胞内のアクロレインと効率的にディールス・アルダー反応を起こすプローブとして、Rawalのジエンに注目した。このジエンは末端部分に反応活性化基としてアミノ基が必要であり、アクロレインを代表とする電子不足な二重結合に対して非常に速やかに反応を起こし、6員環化合物を与える。さらにその後、シリルエノールエーテル部分を加水分解することで、アミノ基が放出されることが知られている。そこで、アミノ基が活性の鍵となる抗がん剤を始めとする生物活性分子をジエンに対して導入することによって、がん細胞内で大量に発生するアクロレインと選択的に反応して生物活性分子を放出できると考えた。 まずこのジエンの反応性について検討したところ、ジエンは生体内に存在すると考えられる様々な共役ケトンやアルデヒドの存在下でも、生体内環境の反応条件下では最も反応性の高いアクロレインのみが非常に素早く反応することを見出した。さらに、アクロレインとの付加成生物である6員環化合物の場合では、エノールエーテル部分を加水分解する操作なしに、活性水素からの脱離反応により自動的にアミノ基が放出されることが分かった。 そこでこれらの結果を基に、ジエンの末端部分に対して様々なアミノ基を持つ分子を導入し、アクロレインと反応させたところ、いずれの場合にも良好に反応が進行した。さらに、蛍光基を持つアミノ基を導入したジエンを調製し、アクロレインを高濃度で産生するがん細胞と反応させたところ、細胞内でも期待したディールス・アルダー反応が進行することが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、ジエン部分に様々なアミノ基導入し、生体内環境と同様の条件下ではアクロレインと選択的に反応が進行することを見出した。さらにがん細胞内でも、内在性のアクロレインと良好に反応し、ディールス・アルダー反応が起こることを明らかにした。これらの結果は、がん細胞で当該反応を起こして抗がん活性分子を放出できることを示しており、研究はおおむね順調に進展していると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、アミノ基が活性の鍵となる抗がん剤をジエンに対して導入することによって、がん細胞内で大量に発生するアクロレインと選択的に反応して抗がん剤を放出する。すなわち、ジエンの末端部分に対して、アミノ基が活性の鍵となる抗がん剤として、強力な抗がん剤であるが危篤な副作用があるマイトマイシンCやドキソルビシンを導入して、アクロレインとの反応を検討する。 さらに、上記で合成した各種ジエンを用いて、がん細胞内におけるアクロレインとの反応性を検討する。アクロレインの発生が少ない正常細胞と比較して、各種ジエンをがん細胞に導入したときに抗がん剤の放出量を検討するとともに、抗がん活性を評価する。また、ジエンの細胞内での安定性についても検討し、アクロレインと反応した時にのみ抗がん剤が放出されるプロドラッグ法に適したジエンを開発する。 最終的に、細胞株での検討を基にして、ヌードマウスにがん細胞株を正着し、動物レベルでプロドラッグ法が効果的に機能するかどうか検討する。抗がん剤に応じた至適容量を静脈投与して、がん縮小効果を検討するとともに、抗がん剤そのものを注射した時と比較して、体重や血球数を指標とした副作用について評価する。
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Causes of Carryover |
研究期間の前半と後半のうち、当初は丁度、半分で研究費を使用する計画にしていた。しかし研究を遂行する過程において、特に研究機関の後半で特に高価な細胞実験や動物実験に集中して行う必要性が出てきた。このために、前半で使用金額を可能な限り制約して、後半不自由なく生物学実験を実施するために繰越を行なった。
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[Journal Article] Preclinical evaluation of the therapeutic potential of 211At-radiolabeled 2,6-diisopropylphenyl azide in mouse models of human lung cancer2024
Author(s)
Y. Ode, A. R. Pradipta, P. Ahmadi, A. Ishiwata, A. Nakamura, Y. Egawa, Y. Kusakari, K. Muguruma, Y. Wang, X. Yin, N. Sato, H. Haba, K. Tanaka
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Journal Title
RIKEN Accel. Prog. Rep.
Volume: -
Pages: -
Peer Reviewed
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[Presentation] Internal radioisotope therapy utilizing [3+2] cycloaddition with acrolein2023
Author(s)
Y. Ode, A. R. Pradipta, P. Ahmadi, A. Ishiwata, A. Nakamura, Y. Egawa, Y. Kusakari, K. Muguruma, Y. Wang, X. Yin, N. Sato, H. Haba, K. Tanaka
Organizer
RIKEN-Academia Sinica-Tokyo Tech-NTHU Glycoscience Joint Meeting, Academia Sinica
Int'l Joint Research
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