2023 Fiscal Year Research-status Report
Crop stethoscope: diagnosis of plant robustness by measuring microvibrations
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23K18019
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
加藤 洋一郎 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 教授 (50463881)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中島 大賢 北海道大学, 農学研究院, 助教 (70710945)
友部 遼 東京工業大学, 環境・社会理工学院, 助教 (90880005)
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Project Period (FY) |
2023-06-30 – 2026-03-31
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Keywords | 倒伏 / トウモロコシ |
Outline of Annual Research Achievements |
飼料用トウモロコシの耐倒伏性改善において強稈性は重要形質であるが、その評価には破壊的な計測を伴う。一方で,加速度センサーアレイを用いた弾性特性の非破壊計測手法(衝撃弾性波法)により、茎部頑強性の迅速評価の可能性が推察された。しかし,本手法によって得られる茎部ヤング率と稈構造の関係性は未解明である。2023年度は,飼料用トウモロコシ茎部に小型加速度センサを取り付け、地際部を打撃することで発生したせん断波の伝搬速度を計測することにより、飼料用トウモロコシ茎部の強度特性を把握することを試みた。ほ場における試験と物理物理シミュレーションの結果から、本手法で得られたヤング率は、飼料用トウモロコシ茎部のヤング率として一定の妥当性が認められた。さらに、衝撃弾性波法に基づく茎部頑強性計測デバイスをフィールド計測用に改良を重ね、トウモロコシ16品種の茎ヤング率を比較し、遺伝的変異に関わる形質を探索した。加えて、ヤング率が異なるトウモロコシ品種の茎横断切片を作成し、茎部頑強性と組織構造の関係性を調査した。衝撃弾性波計測では、加速度センサーを最下位節および着雌穂節に取り付け、茎基部に軽打を与えることで弾性波を励起し、波速から茎部ヤング率を算出した。その結果、茎部ヤング率には有意な品種間差が認められ、ヤング率を目的変数として重回帰分析を行ったところ、着雌穂高および茎中乾物密度の標準偏回帰係数が高く、これらの形質が強稈性において重要と考えられた。さらに、ヤング率および茎中乾物密度あたりのヤング率が異なる品種の茎横断切片を観察したところ、厚壁組織の厚みや面積と有意な正の相関を示した。これらより、衝撃弾性波法を用いて計測した茎部ヤングは、茎中の乾物密度や組織構造を反映したものと考えられ、厚壁組織への重点的な乾物投資がトウモロコシの強稈性を効率的に高めることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
加速度センサーアレイを用いた弾性特性の非破壊計測手法(衝撃弾性波法)の開発は順調に進んでおり、これによる茎部頑強性の迅速評価も少しずつ様子が見えてきている。
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Strategy for Future Research Activity |
作物の倒伏現象は、地上部の負荷量が茎部や根系の支持力を超過した際に生じることから、地上部負荷量軽減のための低重心化や支持力向上のための茎部強化の改良が必要である。飼料用トウモロコシは資源作物の中では植物体が大型であることから、せん断波を用いた物性計測技術の開発に好適な作物である。これまでの研究過程で、飼料用トウモロコシ茎部を伝搬するせん断波と飼料用トウモロコシ茎部の強度特性との関係を中心に、複数の新たな課題が浮き彫りとなっている。特に、トウモロコシの茎内部を伝搬するせん断波に分散性が認められ、その分散特性と茎のヤング率分布を関連付けるための物理モデルの構築が必要なことが最近明らかとなり、現在はその課題に対応するため、計測技術の向上と物理モデルの構築を並行して進めていく予定である。また、飼料用トウモロコシをモデルとして研究を継続して計測技術の性能向上(計測デバイスの小型化と高精度化、迅速化に向けた改良)を目指すとともに、得られた成果をより小型な植物体を有するイネ・コムギ・ダイズ等の他の穀実作物へと応用する研究を並行して進める予定である。特に、昨年度までの研究過程で植物体の固有振動数に関する計測手法および予測手法を整備してきたことをもとに、植物体の固有振動数と倒伏リスクの関係を定量化する試みを加速する。以上の取り組みにより、幅広い作物の倒伏抵抗性を高め、強大化する台風・豪雨に対しても安定的に多収が得られる品種・栽培手法の開発に繋げることを目指す。これに加えて、昨年度の試験で選抜した茎物性が異なるトウモロコシ品種を異なる栽植密度および施肥条件下で栽培し、茎部頑強性の環境応答に対する組織構造や炭水化物組成の影響を調査する予定である。
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Causes of Carryover |
センサー機器類について、当初の想定よりも安価なものが新しく見つかり、次年度使用額が生じた。次年度は、さらに多くのセンサー機器を用意して、規模を大きく(点数を増やして)して測定を進めていく。
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Research Products
(3 results)