2023 Fiscal Year Research-status Report
花器内生息アザミウマは果実発達をカビやアブラムシ等から護る掃除人か?
Project/Area Number |
23K18022
|
Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
川窪 伸光 岐阜大学, 応用生物科学部, 教授 (60204690)
|
Project Period (FY) |
2023-06-30 – 2026-03-31
|
Keywords | アザミウマ / 花生態学 / 動植物間相互作用 / 生態学的種間関係 / 超マクロ映像記録 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,【花とアザミウマの未知の生態的相互作用を,送粉生態学の枠組みを超えて解明し,開花から結実の過程をメインテナンスしているかも知れないアザミウマ類の生態を探り,生物農薬としての新たな可能性をも検討すること】である。この目的に対しての,研究実施計画として,初年度と第2年度において,【アザミウマ花内生息普遍性の探索とアザミウマ種同定による植物昆虫の種特異性の検討】と,【アザミウマのノアザミ頭花内での生活史を探る】の2点を掲げ,事実,本R5年度は,これらの検討と探索を並行して実施してきた。
当初の計画では,アザミウマの行動や形態を詳細に観察するために,本研究予算の一部を,高性能の実体顕微鏡の購入にあてる予定であったが,その予算を,最新の高性能デジタルカメラとレンズの購入に充てた。この理由は,研究を始めて見ると,野外からのサンプルを,室内実体顕微鏡で観察していたのでは,自然界でのアザミウマの行動,特に花内での自然な行動を見ることができないと確認でき,実体顕微鏡の限界性に早い段階で気づいたからだ。そこで,最新のデジタルカメラと高性能マクロレンズの組み合わせを検討した。すると野外において,1mm前後のアザミウマの行動をみごとに観察出来ることが判明した。超解像の静止画と,4K動画がマクロで撮影記録でき,この研究の目的にそった結果を得られる装備が整ってきた。
得られつつある成果は,以下のインターネットサイトに公開予定であり,このサイトを利用して,他の研究者たちと観察結果の検討をおこないつつ,有意義な研究議論を構築していく予定である。 https://sites.google.com/view/thrips-in-flowers/%E3%83%9B%E3%83%BC%E3%83%A0
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初,予想していなかった,野外における微細昆虫であるアザミウマの行動の把握の難しさを,最新のデジタルカメラセットによって克服してきた。そのおかげで,花の中でのアザミウマの行動が記録出来始めた。
アザミウマの花内行動は,実は,非常に高速で,裸眼(肉眼)では,その速さに対応出来ない。つまり,1mm前後の微細昆虫であり,その昆虫が花内で高速で移動するので,彼ら彼女らが花内で何をしてるかは,肉眼ではまったく観察出来ない。実のところ,研究開始当初,本腰をいれた野外観察でも,手も足も出なかった。これは,花の液浸標本から落ちてくるアザミウマを観察して,本研究のアイディアを得た私として非常に新鮮な発見であった。
このような高速で行動する微細昆虫の野外観察には,現状ではOM SystemのOM-1カメラボディに,同社のマクロレンズM.ZUIKO DIGITAL ED 90mm F3.5 Macro IS PROと,M.ZUIKO DIGITAL 2x Teleconverter MC-20を組み合わせて対応している。このセットは,挑戦的な萌芽研究ならではの,全く新しい野外マクロ観察と映像記録を可能としていると理解出来る。
|
Strategy for Future Research Activity |
とにかく,観察対象が,高速で移動する微細昆虫であるアザミウマである困難を克服して,野外観察,つまり野生の生態を明らかにしていく研究を継続していく。アザミウマは体長1mm程であるが,現在の観察システムで,横からの観察,4K動画記録も可能になってきている。したがって,花の表面を高速で移動するアザミウマの頭部下部の口器部分の動きや,花弁などの表細胞へのダメージなども,観察記録したい。現状では,口器が植物細胞に突き刺さっている状態は観察出来ておらず,さらなる観察活動が求められている。さらに,アザミウマは典型的な農業害虫であるので,作物に害をあたえる口器の動きなども記録して,花の中の行動と作物表面での害虫としての行動とを,相互比較していく予定である。とにかく,粘り強く,観察記録を継続したい。
|
Causes of Carryover |
次年度使用額(B-A)が,770,379円生じた。この理由は,この萌芽研究の困難に直面し,それを乗り越えるために購入備品を再検討して,予算使用を控えたため である。具体的には,当初,購入予定していた「ニコン社製研究用システム実体顕微鏡(SMZ25)」では,研究対象であるアザミウマの花中における生態的活動 を充分には観察出来ないことが判明したためだ。研究開始から,野外観察を繰り返した結果,最適な機材が何であるかが判明し,その機材セット「OM Systemの OM-1カメラボディに,同社のマクロレンズM.ZUIKO DIGITAL ED 90mm F3.5 Macro IS PROと,M.ZUIKO DIGITAL 2x Teleconverter MC-20を組み合わせ」の最適な 利用法を模索していた。本年度R6年度は,この最適な機材セットをもう1セット購入して,観察結果をより豊富にして,研究成果を上げていきたい。また,最適 観察記録デジタルカメラセットによって得られる4K動画観察と編集には,高速演算処理可能なコンピュータが必要となり,その購入とセットアップを行う。
|
Remarks |
【アザミウマは花で何をしている?】は,花の中で高速で移動する微細昆虫の形態と行動を記録してWeb公開しはじめたサイトである。この挑戦的な萌芽研究が見つめている対象アザミウマを,わかりやすく紹介すると共に,観察研究の困難性も理解して頂けるサイトにしていきたい。
|