2023 Fiscal Year Research-status Report
New developlents of breeding and evolutionary studies taken advantage of using information of porotein three-dimensional structures by Alphafold2
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23K18039
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Research Institution | Kazusa DNA Research Institute |
Principal Investigator |
平川 英樹 公益財団法人かずさDNA研究所, ゲノム事業推進部, 主任研究員 (80372746)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小野寺 康之 北海道大学, 農学研究院, 准教授 (80374619)
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Project Period (FY) |
2023-06-30 – 2026-03-31
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Keywords | AlphaFold2 / 高次的機能SNP / タンパク質立体構造 / 機能部位 / 原因遺伝子 |
Outline of Annual Research Achievements |
現在、多型解析に基づく育種形質、栽培化形質および適応形質などの原因遺伝子の同定に向けた研究が行われているが、その特定までに至るには困難なことが多い。その理由の一つとして、発現されたタンパク質が最終的に形質に影響を与えるにも関わらず。アミノ酸残基の変異がタンパク質の機能や活性に与える影響に関する視点からの評価軸が欠けていることが挙げられる。ゲノム網羅的な多型解析で検出される膨大な数のSNPの中から有力な原因遺伝子の候補を絞り込む上で、この新たな視点を加える意義は大きい。非同義置換が生じたアミノ酸残基の立体構造上の位置を特定し、立体構造から予測された機能部位に含まれるものをタンパク質の機能・活性に直接的に影響を与える「高次機能的SNP」として定義する。今年度の実績としては、ホウレンソウについて各国の品種におけるゲノムワイドなSNPを調べ、トマトについては、栽培種と野生種におけるSNPを調べ、さらに、dwarf遺伝子における機能的SNPをMicro-Tomにおいて検出した。アブラナ属作物については、染色体レベルで解読された植物種をNCBIのGenomesデータベースにおいて調べ、それらの中から作物を選出し、今後、高次機能的SNPに関する解析を行う。検出された「高次機能的SNP」について、種間・種内変異や形質変異、栽培地域との関連性の検証を通じて、栽培化や育種および適応進化に寄与した遺伝子を迅速に同定し、効率的な育種に役立つ研究基盤を構築する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1.高次機能的SNPの探索およびデータベースの構築 ホウレンソウについては申請者らが2021年に公表したゲノム配列SOL_r1.0を用いて、NCBIで公開されているアフガニスタンや中国、ベルギーなど各国の品種および野生種のリシークエンスデータを用いてSNPを検出した。一方、HiFiリードを用いて解読した高精度な雄株と雌株のホウレンソウのゲノム配列を構築したため、それらに対する遺伝子予測を行っている。トマトについては、十分なリード量があるMicro-TomやM82、Money Makerなど7品種と野生種4種のリシークエンスデータを用いて、Heinz 1706のゲノム配列SL4.0に対するSNP解析を行った。高次機能的SNPを探索する際、タンパク質立体構造を用いるため、LocalColabFold上でAlphaFold2を使えるよう解析環境を整備した。そこで、トマトHeinz 1706とMicro-Tomについて、dwarf遺伝子の立体構造を予測したところ、Micro-TomではSNPによって活性部位付近のループ構造が失われており、そのSNPを高次機能的SNPとして検出した。アブラナ属作物については、亜種を含め、21属62種が染色体レベルでゲノム配列が解読されていた。これらの中から農作物として利用されている植物種を選出している。 2.高次機能的SNPをもつ遺伝子の機能解析 本年度はホウレンソウやアブラナ属作物から高次機能的SNPを持つ遺伝子の同定を進めている段階であり、機能解析までは進んでいない。機能解析として計画している、RT-qPCR法に基づく遺伝子発現解析やホウレンソウおよびアブラナ属作物を宿主とするキュウリモザイクウイルス由来のベクターを用いたウイルス誘導ジーンサイレンシング系によるノックアウト実験の準備を進めた。
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Strategy for Future Research Activity |
1.高次機能的SNPの探索およびデータベースの構築 本研究では、対象とした植物種における各遺伝子のタンパク質立体構造を予測し、活性に影響を与えるSNPを探索する。GPUを用いない場合、立体構造予測に時間を要するため、各植物における全遺伝子の立体構造を予測することは現実的でないことが分かった。このため、次年度は立体構造を効率的に予測する手法について検討する。現在、ホウレンソウの雄株と雌株の高精度ゲノム配列の解読は完了しており、それぞれにおいて遺伝子予測を行っている。その後、アノテーションを行い、各国の品種についてのSNP解析に取り掛かる。トマトについては引き続き解析を進め、アブラナ属については、染色体レベルでゲノム配列が解読されており、有用な作物についてSNP解析を行い、高次機能的SNPを探索する。 2. 高次機能的SNPをもつ遺伝子の機能解析 ホウレンソウとアブラナ属について、高次機能的SNPをもつ代謝経路上の酵素や転写因子について、RNA-SeqデータおよびRT-qPCR法を用いた遺伝子発現様式の解析やキュウリモザイクウイルス由来のベクターを用いたウイルス誘導ジーンサイレンシング系によるノックアウト実験などに基づいて表現型への影響を調べる。複数の植物においてオルソログ関係にある機能未知遺伝子において高次機能的SNPが検出された場合、その遺伝子について、表現型への影響を調べる。これによって、詳細な遺伝子の機能解析を試みる。
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Causes of Carryover |
次年度の予算と合わせることで、研究に必要な計算機サーバを購入するため。
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