2023 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23K18048
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
加藤 泰彦 大阪大学, 大学院工学研究科, 准教授 (60415932)
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Project Period (FY) |
2023-06-30 – 2026-03-31
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Keywords | 遺伝子覚醒 / DNAメチル化 / エピゲノム編集 / 成長速度 / ミジンコ |
Outline of Annual Research Achievements |
甲殻類の中でもオオミジンコはゲノム編集をはじめとした分子生物学的実験手法が最も確立されている種であり、甲殻類の分子育種のモデルとなる。商業的に価値が高い水棲生物の分子育種においては、ゲノム編集を利用した手法が用いられてきたが、遺伝子配列が変化した生物の生命倫理の問題や安全性の懸念は残されたままである。そこで、本研究ではDNAメチル化の操作を行うことによって、遺伝子配列を変えずに遺伝子活性を制御する手法を開発することを目的とした。DNAメチル化に着目した理由としては、代表者らが作出した de novo DNAメチル化酵素 DNMT3 のオーソログである DNMT3.1の変異体において、エネルギー分配が繁殖から成長にシフトしたことによるものである。一方で、ミジンコが有するもう一つのオーソログ DNMT3.2 の変異体の表現型は不明である。そこで、ゲノム編集によって DNMT3.2 変異体の作出を試みた。DNMT3.2 に特異的に結合する gRNA を設計し、in vitro アッセイにより gRNA の活性を確認後、gRNA を Cas9 タンパク質とともにオオミジンコの卵に注入した。その結果、両アレルにフレームシフト変異を有する変異系統を作出することに成功した。一方で、DNMT3.1が制御する遺伝子を探索するために、野生型と DNMT3.1 変異体における DNA メチル化領域を比較する実験を開始した。野生型およびDNMT3.1変異体を栄養豊富な条件、飢餓条件でそれぞれ飼育し、ゲノムDNAを調製した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
オオミジンコゲノムのDNAメチル化の制御機構を解析する上で必須であるDNMT3.2変異体の作出に成功し、一方でDNMT3.1変異体のDNAメチル化解析に供するゲノムDNAの調製を終えたため。
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Strategy for Future Research Activity |
全ゲノムバイサルファイトシーケンシングにより野生型と DNMT3.1 変異体ゲノムの DNA メチル化状態の比較を行う。DNMAT3.1 依存的にプロモーターがDNAメチル化される遺伝子群と、研究代表者らが以前に明らかにした DNMT3.1 変異体において覚醒する遺伝子群を比較し、DNMT3.1 によりプロモーター領域が DNA メチル化されることで不活性化される遺伝子をリストアップする。さらにこれらの遺伝子に対して CRISPR-Cas9 を用いた変異導入による機能解析を、成長にエネルギーが投資されている DNMT3.1 変異体で行い、ノックアウトで成長阻害が起きるか否かを指標として成長促進遺伝子を同定する。DNMT3.2 ついては、変異体の表現型、遺伝子発現解析を行う。一連の解析から成長や繁殖等の制御を行なっていることが明らかとなった場合には、DNMT3.1 と同様に変異体の DNA メチル化状態の解析を行う。
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Causes of Carryover |
冬季休暇中に実験室において、空調設備の温度調節に不具合が生じ室温が低下したことにより、DNAメチル化解析に使用するミジンコの繁殖率が当初の想定以上に悪く、DNAメチル化解析に使用するゲノムをミジンコから抽出し終えるのに当初の予定よりも時間を要した。このため計画が遅れ次年度使用が生じた。次年度にDNAメチル化解析に使用する予定。
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